経営お役立ちコラム

2020.11.05 【新型コロナウイルス関連】

新型コロナウイルス対策に関するQ&A(テレワークについて)

弁護士 熊谷 吏夏

Q1 「テレワーク」とは、どのようなものをいうのですか。
A
テレワークとは、労働者が情報通信技術を利用して行う事業場外勤務のことで、①自宅で業務を行う在宅勤務、②労働者の属するメインオフィス以外に設けられたオフィスを利用するサテライトオフィス勤務、③ノートパソコンや携帯電話等を活用して臨機応変に選択した場所で業務を行うモバイル勤務があります。
テレワークについては、「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のガイドライン」(平成30年2月22日策定)がありますので、このテレワークガイドラインを参考にしてください。

(参考)

https://telework.mhlw.go.jp/wp/wp-content/uploads/2019/12/GuideLine.pdf
Q2 労働契約を締結する際に、テレワークを行わせる旨明示しておかなければなりませんか。
また、すでに労働契約を締結している労働者についてテレワークを行わせる場合には、労働条件変更の必要がありますか。
A
労働基準法によれば、使用者は、労働契約を締結する際、労働者に対し、賃金や労働時間のほかに、就業の場所に関する事項等を明示しなければならないとされています(同法第15条、同法施行規則第5条1項1の3号)。したがって、就労開始時にテレワークを行わせる場合には、就業場所としてテレワークを行う場所を明示する必要があります。
また、テレワークガイドライン2(2)アによれば、①専らモバイル勤務をする場合等で、業務内容や労働者の都合に合わせて働く場所を柔軟に運用する場合は、就業の場所についての許可基準を示した上で、「使用者が許可する場所」といった形で明示することも可能である、②テレワークの実施とあわせて、始業及び終業の時刻の変更等を行うことを可能とする場合は、就業規則に記載するとともに、その旨を明示しなければならない、とされています。
なお、上記労働基準法及び厚生労働省通達(平成11年1月29日基発第45号)によれば、就業の場所は「労働契約締結に際して」「雇い入れ直後の就業の場所」を明示すれば足りるとされていますので、すでに採用している労働者についてテレワークを実施することになったとしても、改めて労働契約書を締結しなおす等の措置は不要です。
Q3 テレワークを導入するにあたり、就業規則を変更する必要がありますか。
A
「就業の場所」は就業規則の必要的記載事項ではないので(労働基準法第89条)、テレワークを実施するために就業規則を変更する必要はありません。
もっとも、テレワークに要する通信費、情報通信機器等の費用負担、サテライトオフィスの利用に要する費用、専らテレワークを行い事業場への出勤を要しないとされている労働者が事業場へ出勤する際の交通費等、テレワークを行うことによって生じる費用については、通常の勤務と異なり、テレワークを行う労働者がその負担を負うことがあり得ることから、労使のどちらが負担するか、また、使用者が負担する場合における限度額、労働者が請求する場合の請求方法等については、あらかじめ労使で十分に話し合い、就業規則等において定めておくことが望ましいでしょう(テレワークガイドライン3(4))。特に、労働者に情報通信機器、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合には、当該事項について就業規則に規定しなければならないこととされているので(労働基準法第89第5号)、労働者にテレワークに要する費用を負担させる場合には就業規則の変更が必要です。

(参考)

テレワーク導入のための労務管理等Q&A集
https://telework.mhlw.go.jp/wp/wp-content/uploads/2019/12/RomuQA.pdf
Q4 テレワークを実施する場合、労働者の労働時間管理についてどのような点に留意すべきですか。
A
テレワークを行う場合でも、使用者は原則として、労働時間を適正に把握する責務を有し、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)に基づき、適切に労働時間管理を行わなければなりません。
同ガイドラインでは、労働時間を記録する原則的な方法として、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録によること等が挙げられていますが、テレワークでは、一定程度労働者が業務から離れる時間が生じやすいため、このような客観的な記録と実際の労働時間との乖離が生じやすいと言えます。
したがって、労働時間の把握方法は、自己申告が基本とならざるを得ませんが、やむを得ず自己申告とする場合においても、同ガイドラインに則り、自己申告にかかる労働時間と客観的記録を突き合わせ、一定程度以上の乖離がある場合には実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすべきです。
Q5 テレワークに事業場外みなし労働時間制を適用することはできるでしょうか。
また、適用する場合、どのようなことに留意すべきでしょうか。
A
事業場外みなし労働時間制は、労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合で労働時間を算定しがたい場合に、所定労働時間働いたものとみなす制度です(労働基準法第38条の2)。テレワークガイドラインによれば、「使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難」なときは事業場がみなし労働時間制が適用されるとされ、そのためには、①情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと②随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないことの2つの要件を満たす必要があるとされています。
また、事業場外みなし労働時間制が適用される場合も、使用者は労働者の健康確保の観点から、勤務状況を把握し、適正な労働時間管理を行う責務がありますから、必要に応じ、実態に合ったみなし時間となっているか労使で確認し、結果に応じて、業務量を見直したり、労働時間の実態に合わせて労使協定を締結又は見直したりすることが適当です(テレワークガイドライン2(2)イ(イ))。
Q6 フレックスタイム制を導入する場合、どのような点に留意すべきですか。
A
フレックスタイム制は、清算期間やその期間における総労働時間等を労使協定において定め、清算期間を平均し、1週当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲内において、労働者が始業及び終業の時刻を決定し、生活と仕事との調和を図りながら効率的に働くことのできる制度で、テレワークにおいて同制度を活用することは可能です。
フレックスタイム制の導入に当たっては、労働基準法第32条の3に基づき、就業規則や労使協定により、始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねる旨定めるとともに、労使協定において、対象労働者の範囲、清算期間、清算期間における総労働時間、標準となる1日の労働時間等を定めることが必要です。
また、フレックスタイム制は、始業及び終業時刻を労働者の決定に委ねるに過ぎず、使用者が労働時間を把握すべきであることは変わりませんので、Q4と同様、労働時間管理において留意が必要です。
Q7 裁量労働制の対象となる労働者についてもテレワークを行うことはできますか。
A
専門業務型裁量労働制や企画業務型裁量労働制の要件を満たし、制度の対象となる労働者についても、テレワークを行うことは可能です。
もっとも、裁量労働制が適用される場合も、使用者は労働者の健康確保の観点から、決議や協定において定めるところにより、勤務状況を把握し、適正な労働時間管理を行う責務があります。
また、必要に応じ、労使協定で定める時間が当該業務の遂行に必要とされる時間となっているか、業務量が過大もしくは期限の設定が不適切で労働者から時間配分の決定に関する裁量が事実上失われていないかを労使で確認し、結果に応じて、業務量等を見直すことが適当でしょう(テレワークガイドライン2(2)イ(ウ)。
Q8 テレワークにおける長時間労働対策など、健康管理のポイントを教えてください。
A
テレワークについては、業務の効率化に伴い、時間外労働の削減につながるというメリットが期待されますが、他方、労働者が使用者と離れた場所で勤務することにより、使用者の目が行き届かなくなる結果、長時間労働につながりやすい面もあります。長時間労働を防止する方法として、①時間外、休日又は深夜のメール送付の抑制②深夜・休日のシステムへのアクセス制限③時間外・休日・深夜労働の原則禁止④長時間労働等を行う労働者への注意喚起、などが考えられます(テレワークガイドライン2(3))。
テレワークであっても、使用者は労働者に対し安全配慮義務を負いますので(労働契約法第5条)、労働者の健康管理に努めなければなりません。テレワークでは、職場に行かず、対面での上司などとのコミュニケーションもないため、労働時間の状況を把握すること(労働安全衛生法第66条の8の3)が難しいですが、上司が定期的に電話やテレビ会議などで面談を行うなどして様子を確認するのが良いでしょう。そして、一定の長時間労働者については医師による面接指導の実施が義務づけられているので注意が必要です(労働安全衛生法第66条の8、労働安全衛生規則第52条の2第1項)。
また、テレワークは、限られた環境で作業をすることになり、閉塞感がありますので、自宅作業環境の整備について注意すべきです。自宅等において適切な作業環境を準備するようアドバイスをすることも重要です。

(参考)

自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_01603.html
Q9 テレワークにおける費用負担・通勤手当はどう取り扱えばよいですか。
テレワークに必要な通信費や情報通信機器などの費用負担については、労働契約の内容によりますので、労働者に費用負担させることも可能です。あらかじめ労使で十分に話し合い、労働者に費用負担させるのであれば、就業規則で定めておくことが必要です(労働基準法第89条5号。Q3をご参照ください)。
また、通勤手当について、定期券代の支給を取りやめ、出社日の実費相当額のみの支給とすることができるかについては、通勤手当について就業規則でどう定めているかにかかわります。通勤に要する実費相当額を支給するという規定であれば、就業規則の変更なく定期券代の支給を取りやめることが可能ですが、通勤の実績にかかわらず当該手当額を支給するという規定であれば、就業規則の変更が必要になります。
Q10 情報セキュリティに関する留意点
テレワークでは、事業場外で業務を行う以上、労働者は会社の情報を社外に持ち出さざるを得ません。そのため個人のパソコンを使用せざるを得ない、データ処理のために個人のパソコンへデータ保存せざるを得ない、といった個々の状況に合わせて、情報管理をどうするかのルールを定めておくべきでしょう。
また、使用者の事前許可なきデータコピーの禁止、テレワーク終了後の情報の個人パソコンからの削除等につき、労働者から誓約書を取得し、情報管理に対する意識付けをすることも有用でしょう。
具体的にどのようなセキュリティ対策をとるべきかについては、総務省の下記ガイドラインをご参照ください。

(参考)

テレワークセキュリティガイドライン(総務省)
https://telework.mhlw.go.jp/wp/wp-content/uploads/2019/12/Security.pdf