中小企業法律支援センター

顧問契約の中途解約について 投稿者 : 金川 征司(弁護士)

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執筆日:2016/12/01

事業を営む皆様は、日常の経理処理や確定申告のために税理士の先生等会計事務所と顧問契約を契約されていたり、従業員の給与管理などのために社会保険労務士の先生方と顧問契約を締結されていることと思います。
しかしながら、これらの事務処理をお願いしている実務担当者が退職するなどの事情などにより、顧問契約を解除し、新たな顧問契約先を探したいと思うこともあるでしょう。
そのような場合に、顧問契約書を見直してみて、顧問契約が自動更新になっており、途中で解除する場合には、残りの期間の報酬を求められたり、解約申出から数ヶ月分の顧問料を請求されることがわかったということも少なくないのではないでしょうか。
ではそのような条項が顧問契約書に記載されている場合に、顧問契約を途中で解除した後、残っている期間の顧問報酬を請求されると、報酬の請求に応じなければならないのか検討してみましょう。

顧問契約の性質

顧問契約がどのような法的性質を持つかについては、その内容によります。
もっとも、会計事務所などとの顧問契約では、通常は毎月の経理処理と、決算期の確定申告業務の他、一定時間の範囲での税務相談などが含まれていることが通常でしょう。
そうすると、経理処理という具体的な業務と、一般的な事務処理を依頼する準委任契約という性質を有する顧問契約が多いと思います。
そして、委任契約とは、当事者間の信頼関係に基づき、委任する側が事務を依頼するものであり、このような当事者間の信頼関係が重要視されることから、いつでも、どちらからでも解除が可能とされていることに特色があります。
もっとも、かかる解除が受任者の不利益になる場合、委任者はかかる損害を賠償しなければなりません(民法第651条)ので、顧問契約を途中で解除することが受任者である会計事務所などに不利益を与えるのかが問題になるでしょう。

具体的な事例

顧問契約の解除に伴う顧問報酬の可否が争われた事例として、委任契約が受任者の利益のためにも締結されたとはいえないとして、税理士顧問契約の解除を認めた判決や(最高裁昭和58年9月20日判決)や、原告が税理士との顧問契約の解除を主張し、既払報酬のうち一部の支払を求めた事案で、原告が被告に対する信頼を失い解除の意思表示をした日に本件顧問契約は終了したとして、原告の請求を認容した事例(東京地裁平成26年11月11日判決)や、税理士との顧問契約は、期間の定めのある場合でも右期間満了まで契約を継続させる意思を有していたと認めるべき客観的・合理的理由のある場合を除き、民法第651条第1項に基づき、いつでも理由のいかんを問わず解除することができる(東京高等裁判所昭和63年5月31日判決)とした判決などがあります。

結論

以上のように、裁判所は、税理士等との顧問契約の解除につき、委任契約の解除の原則から、広く解除の自由を認めていると言えそうです。
このような事例などからしても、かなり特殊な事情がない限り、顧問先との解除はいつでもでき、顧問契約の期間が残っている場合でも、残りの顧問報酬の請求が認められる可能性は低いといえるでしょう。
もっとも、一般的に長期間の契約を前提としている顧問契約をなんらの理由もなく一方的に解除することは、一方当事者の契約継続の期待を裏切る行為とも言えるため、場合によっては上記のような裁判など紛争になることもあり得るでしょう。
そのような余計な紛争を招かないようにするためには、契約を話し合って合意で解約したり、期間満了と同時に終了させるなど、円満に顧問契約を終了させた方が良さそうです。

最高裁判所 昭和58年9月20日判決

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=62264

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