経営お役立ちコラム

2019.09.05 【契約】

取引先と契約書を交わさず、
受注・発注も口頭で行っていますが、
問題はありますか。

弁護士 小笠原 友輔

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執筆日:2016/7/14

直ちに問題があるわけではないケースも多いですが、口頭での契約は、その内容を曖昧・不明確にし、容易に「言った・言わない」のトラブルのもとになるため、極めて危険です。取引先とのトラブルを未然に防止し、万一トラブルが生じてしまった場合の早期解決のためにも、契約書を作成することを強くお勧めします。

そのことは、見積書・発注書・注文請書等のみで取引を行っている場合も同様であり、やはり契約書を作成することを強くお勧めします。

※本稿は、あくまでも取引一般について述べるもので、個々の取引類型に対応したものではありません。なお、建築工事請負契約、一部の下請取引などの場合には、法律により一定の内容の書面の作成・交付が義務付けられています(建設業法19条、下請法3条など)。さらに、保証契約は、契約書を作成しない場合には契約自体が無効とされます(民法446条2項・465条の2も参照)。

口頭契約の危険性

契約は、一部の例外(保証など)を除き、原則として口頭でも有効に成立します。

そのため、トラブルが起きない限りは書面の必要性を感じないかもしれません。長年の信頼関係があるとか、取引先との力関係に差があって書面作成をお願いしづらいという場合もあるでしょう。

しかし、口頭だけでは、契約の内容が非常に不明確になります。細かい取引条件だけでなく、「そもそも何を注文したのか」というレベルでの問題にさえなりえます。書面ではっきりさせておけば一目瞭然であったことが、双方の認識が食い違って分からなくなり、それ自体が無用のトラブルを引き起こす原因になってしまうのです。

そして、いざトラブルになれば、長年の取引実績のある相手だからこそ、これまで存在していた暗黙のルールや過去の担当者の発言などをめぐって泥沼の紛争になる可能性があります。力関係に差があれば、相手の言い分をそのまま飲まざるを得ないかもしれません。

契約書の機能・役割

上記の危険は、見積書や発注書などのみで取引を行っており、取引の基本条件について契約書を作成していない場合もおおむね同様です。この場合も、やはりきちんと契約書を作成すべきです。

契約書は、当事者が合意した内容を書面にして明確化することで、紛争を未然に防止するとともに、のちにトラブルになった場合には最も重要な証拠になります。たとえ相手方との間にどんな力の差があっても、契約書があればそれが会社や担当者を守ってくれる可能性があります。

また、契約書を作成する際には、予想される様々なリスクを検討してこれを回避するための条項を盛り込むことができ、漫然と取引をするのに比べて圧倒的にリスクに対する耐性を強化できます。さらに、各種の特約条項を活用することによって、自社に有利な取引内容を定められる場合もあります。

契約書の限界と、それでも契約書を作成すべき理由

もっとも、実際に契約書を作成するとなると、企業にとっては面倒でコストもかかると思われるかもしれません。

また、契約書は必ずしも万能ではありません。契約書をどれだけきちんと作っても、その文言の解釈をめぐって争いになったり、予想していなかったリスクが出現する可能性はゼロではありませんし、契約書外の合意をめぐるトラブルの可能性を排除できるものでもありません。

しかし、きちんと吟味・検討された契約書は、取引に関するリスクを完全に無にするわけではなくとも、大きく低減させ、企業のリスク管理の最も基本的なツールになります。企業のトラブルは、ひとたび生じれば遥かに莫大なコストをもたらす可能性がありますので、契約書作成に要するコストは、このようなリスクに備えた保険として十分に合理的といえる場合が多いでしょう。

なお、具体的にどのような内容の契約書を作成すべきかは、各取引類型により大きく異なります。