経営お役立ちコラム

2020.01.09 【取引トラブル】

請負代金の債権回収

弁護士 安井 之人

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執筆日:2016/7/14

リフォーム会社からご依頼を受け、リフォームの請負代金の支払いに応じない顧客に対し、支払いを求めました。任意の交渉では支払いに応じてもらえず、訴訟を提起するに至りましたが、最終的には、和解により解決しました。金額を明示した契約書がなかったことが紛争の原因であり、訴訟でも弱い部分となってしまったため、たとえ面倒ではあっても、きちんと契約書を作成することが紛争予防のために大切です。

ご依頼の受任

リフォーム会社から、「リフォーム工事を行ったのに、代金250万円を支払ってもらえない」とのご相談を受けました。本人同士では埒が明かないとのことで、早速、相手方に対し、通知書を内容証明郵便で送付し、受任したことを通知するとともに、代金250万円の支払いを請求しました。

交渉

相手方は、交渉の段階では、弁護士をつけず、本人が回答をしてきました。支払わない理由は、「事前に金額の説明がなく、金額が高額すぎる」とのことでした。リフォーム会社としては、「事前に金額を説明し、適切な金額しか請求していない」と反論しました。3回ほど、やり取りは行いましたが、相手方が支払う姿勢を見せなかったため、訴訟を提起することになりました。

訴訟の提起

訴訟を提起したところ、相手方は、弁護士をつけて対応してきました。訴訟では、請負代金の金額が争点となりました。金額が大きな争いになったのは、契約書がないことが原因でした。工事中に追加工事を求められたこと等もあり、工事前に金額を相手方に明示したことを証明する書面がなく、口頭で伝えたのみでは言った言わないの話になってしまうため、証拠に弱い部分がありました。

和解

当時のメモや写真等にて、工事代金の金額が適正であることを説明し、契約書がない部分を補強しました。リフォーム会社の社長と相手方本人との尋問まで行いました。最終的には、裁判所による説得もあり、相手方が解決金として130万円を支払うことで和解が成立しました。

まとめ

本件が解決に至ったのは、契約書がない部分を他の証拠である程度補強することができたことでした。また、訴訟を提起したことで、相手方が弁護士をつけたことも大きな要因です。相手方に弁護士がつくことで、法的な見解を本人に説明してもらい、本人の納得を得られ、解決に至ることが多くあります。

しかし、そもそも、契約書があれば、紛争にならなかったかもしれません。また、紛争になったとしても、金額の立証に苦労することはなく、また、請求額に近い金額で和解できた可能性もあります。

紛争予防の観点からしますと、たとえ面倒ではあっても、きちんと契約書を作成することが大切であると言えます。