経営お役立ちコラム

2020.02.28 【不動産】

事故物件の告知義務について
一般的な基準は存在しますか?

弁護士 松浦 聡

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執筆日:2016/10/24

不動産の売主(又は賃貸人、仲介業者)が、自殺・殺人等のあったいわゆる事故物件について、その事実を買主(又は賃借人)に告知すべきかについての一般的な基準は存在しません。
裁判例においては、個別の事案ごとに、時間経過の長短、事件の重大性、居住用か事業用か、ファミリー向けか単身用か、自殺か他殺か、地域環境(都会か人的関係が密な農村部等か)、事件後の購入希望者(又は入居者)の有無など、様々な要素を総合的に考慮して心理的瑕疵や告知義務の有無が判断されています。

事故から3年経過すれば告知すべき心理的瑕疵はなくなると判断してもよいですか?

心理的瑕疵の有無は一定の時間経過のみで判断されるわけではありません。
裁判例では、マンションの売買について、8年9ヶ月前の殺人事件について心理的瑕疵を肯定した事案がある一方(大阪地裁平成21年11月26日判決)、商業ビルの買受(競売入札)については、入札2年前の殺人事件について心理的瑕疵を否定した事案もあります(東京高裁平成14年2月15日決定)。
これは、前者ではファミリー向けマンションであることや2名が死亡したという事件の重大性などが考慮され、後者では匿名性の高い都心部の商業ビルであることや事件のあった貸室に次の賃借人が入居していたことなどが考慮されたことによるものです。
このように、心理的瑕疵の有無は個別の事案ごとに諸事情を総合考慮して判断されます。
なお、賃貸事案では、2年から4年の経過により心理的瑕疵を否定する裁判例が多いものの、事案ごとの個別判断が必要であることは上記同様です。