経営お役立ちコラム

2020.04.03 【新型コロナウィルス関連】

新型コロナウイルス対策に関するQ&A(取引関係)

Q1
海外からの部品の入手ができず、商品を完成品とすることができず、取引先に商品の納入できない場合に、当社に何か責任が生じますか?
A1
※民法(債権関係)改正法の施行日は令和2年4月1日ですので、同日より前に締結された契約には改正前の民法が、同日以降に締結された契約には改正後の民法が適用されます。

【民法改正前】
締結された契約書に不可抗力の場合の条項があれば、今回の新型コロナウイルス感染拡大が不可抗力条項にあてはまるかどうかの検討が必要になります。契約書が締結されていなかったり、契約書が締結されても不可抗力の条項が無い場合には、納入できないことが貴社に責めに帰すべき事由があるといえるのか検討が必要になります(債務不履行 民法415条。例えば、こういったリスク発生を予期して在庫等を持つべきであったのに持っていなかった場合に、帰責事由ありとなる可能性があります。)。
貴社に責めに帰すべき事由がない場合で、かつ履行できなくなった場合には、原則として貴社の納入義務が消滅して取引先の代金支払義務も消滅しますが(現行民法536条1項)、取引の対象が特定物の売買等の場合には、商品の引渡義務は履行不能により消滅する一方、反対債務である代金支払義務は消滅しないとなります(民法534条1項)。ただし、契約書上同法の取り扱いが修正され、引き渡しを行った以降のみ債権者が危険を負担する、つまり引渡後の滅失の場合のみ代金支払義務は消滅しないと定められている場合には(そのように定められていることが多いです)、代金支払義務は消滅しますので、契約内容の確認が必要です。
なお、古い判例ですが、事情変更を理由に履行期限の延期等が認められた裁判例はあります(高松高裁昭和35年10月24日判決下民集11巻10号2286頁)。契約上あるいは民法上のスタンスを踏まえて、このような危機的な状況ですので、両当事者協議の上、双方の損害が最小限となるように解決策を模索する必要があるでしょう。

【民法改正後】
改正後民法においては、改正前民法534条は削除されています。そのため、特定物の売買等の場合において、物の引渡等が履行不能になった場合に債権者が危険を負担する(責任を負う)、つまり代金支払義務は負うという規定はなくなることになります。また、改正後民法536条は、物の給付義務等が履行不能によって消滅した場合、反対債務である代金支払義務等が当然に消滅するのではなく、債権者は、反対代金の支払等の履行を拒絶できるとされます。さらに、上記のような物の不可抗力による滅失等の危険は、売買においては、引き渡しをもって移転すると規定されます(改正後民法567条)。なお、契約を解除することにより、代金支払義務を免れることになります(改正後民法541条~543条により債権者に帰責事由ある場合のみ解除が不可となり、債務者に帰責事由がなくても解除可能となりました。)。
Q2
当社は配送業者ですが新型コロナウイルスの流行により、運送担当を確保できず、取引先から依頼を受けた商品を期限通りに配送できず、取引先に損害が生じました。当社は取引先に対して損害賠償請求されますか?
A2
運送約款において「不可抗力による火災、風水害等による貨物の延着」については免責事由となっており、この場合においても、不可抗力といえるかどうかが争点となります。新型コロナウイルスなどの発生が予測可能かどうか、それに対して対策を取ることができたかどうかにより、不可抗力といえるかどうかが判断されます(参考判例 東京地判平成11・6.22判タ1008号288頁)。
Q3
政府あるいは自治体からイベントの自粛要請がありましたが、それを拒否し、イベントを強行したところ、参加者の中から新型コロナウイルスの感染者が出た場合に、イベントを開催した事業者はり患した参加者から損害賠償責任を追及されますか?
A3
イベント開催事業者は、単に求められたイベントを開催すればよいのではなく、条理上ないしは社会通念上、当然に参集者の生命・身体等の安全を確保すべき注意義務を負うのであり(神戸地判平成17・6・28【明石市花火大会歩道橋事故】)、参加者の多くが新型コロナウイルスにり患したという場合であれば、同事業者は当該義務に違反した可能性があり、その結果、り患した者から責任追及される可能性があります(ただし、すでに新型コロナウイルスが感染しており、そのことを参加者が認識していたという場合には、過失相殺の可能性もあるかと思います)。
Q4
売掛先が新型コロナウイルスで経営が悪化し、予定されている代金の支払いができないと言ってきているが、もし支払いがないと当社の買掛金の支払いができないが、このような事情でも当社は買掛金を支払う責任を負うことになりますか?
A4
たしかに、代金を支払えないという事情は理解できるものの、民法では金銭債権において不可抗力は免責事由とならないため(民法419条3項)、取引金融機関等に相談をして、資金調達をしなければ、債務不履行となります。そのため、支払先に事情を考慮し支払い期限を延長する等協議を行うことが必要と考えられます。
Q5
ある会社の全株式を買い取る契約(M&A契約)の締結をしていたが、新型コロナウイルスの広がりにより、対象会社の業績が著しく悪化しました。契約解消ができますか?
A5 締結前の事情と大幅に変わってしまった場合に、締結済みの事業譲渡契約や株式譲渡契約に、重大な悪影響が生じた場合に取引のクロージング(終了)を阻止し、または契約解除を可能とする、いわゆるMAC(Material Adverse Change)条項が規定されているか否かがポイントで、もし規定されていた場合には、当該条項を当該事案において適用できるかどうかを検討することになります。仮にそのような条項がなかった場合には、日本法を準拠法とする場合に、事情変更の法理に基づく契約解除の余地がないかどうか(認められる余地はかなり厳しいとは思われます)、検討することも考えられます。
Q6
イベントに使う物資を納入しましたが、イベント主催者から、新型コロナウイルスの感染の拡大で、イベントを中止したと通告され、イベントで使う物資の納入は受けられないと言われました。イベントの主催者に物資の代金を請求できますか?
A6
受領遅滞の問題ですが、民法413条に「債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができないときは、その債権者は履行の提供があった時から遅滞の責任を負う」と定められており、物資の納入業者が履行の提供をしたにもかかわらず、イベント業者が受領を拒んでもイベント事業者の代金支払は遅滞となり、物資の提供者は代金の請求をすることができると考えられます。
なお、物資の納入や代金の支払い時期等に関して契約書に定めがある場合がある場合には同契約書に従うこととなりますので、契約書の内容をよく確認してください。
Q7
新型コロナウイルスの感染の拡大で、納品先が商品を受け取れないと受領を拒否して困っています。受領を拒んだことを原因として、損害賠償責任を追及できますか?
A7
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、受け入れ体制が整わないなどの理由で、債権者が債務の履行を受けないと主張することが考えられます。
判例は、一般的には債権者であることのみを理由に受領義務や協力義務が認められるものではない(つまり、受領できなくても債務不履行にならず、受領遅滞を理由とした損害賠償請求や契約の解除はできない)との立場を取っていると評価されていますが、契約その他の債権の発生原因や、信義則に基づいて個別に受領義務や協力義務が認められる場合もあり得ます(硫黄鉱石売買契約において、信義則上、買主の引取義務を肯定して損害賠償請求を認めた最判昭和46・12・16民集25巻9号1472頁)。
債権者の側に受領義務や協力義務が認められれば、損害賠償責任を追及することができます。

改正後民法においては受領遅滞の条文が追加され、債権者が債務の受領を拒みまたは受領することができない場合において、目的が特定物の引渡である場合には、債務者は、自己の財産に対するのと同一の注意義務をもって物を保管すれば足り(改正後民法413条1項)、費用がかかればこれは債権者の負担となり(同条2項)、受領遅滞後に双方の責めに帰すことができない事由よって履行ができなくなってしまった場合は債権者の責任とされます(改正後民法413条の2)。これらの効果発生について債権者の帰責事由は不要と解されています。ただし、受領遅滞に基づく契約の解除や損害賠償請求については新法でも規定されず、解釈に委ねられており、旧法下での判例は、基本的にこれらを否定しています(最判昭和40年12月3日)。受領遅滞に関する民法の改正は、従来一般に認められた効果を明文化したに過ぎないと言われています。
Q8
ある事業者がイベント会場用施設を利用して20年3月に大規模なイベントを企画していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために政府の自粛の要請に従い、イベントを中止(延期)しました。ところがこのような状況であるにもかかわらず、イベント会場の運営会社からは施設利用料金100%の支払を求めると告げられました。このように政府の要請に従ってイベントの実施を自粛した場合でも、一方的なキャンセルと同様の扱いになるのでしょうか。
A8
イベントの中止により、運営会社側のイベント会場を提供する義務は履行不能に陥っていると考えられます。
まずは、イベント会場の施設利用の際に締結した契約書において、中止の際の規定としてどのような規定を置いているのか確認する必要があります。規定がある場合には、その規定に従うことになります。
次に、契約書に規定がなかったり、契約書を締結していない場合、感染症の蔓延あるいは拡大防止として政府等によりイベント自粛が強く要請された場合には、社会通念上履行不能と言える要因(社会的阻害要因)があったといえる可能性があり、契約解除事由に該当あるいは危険負担の問題として対応が可能と考えられます。Qの例は、政府の要請によるイベント中止ですから、当事者双方の責めに帰すことができない事由として、危険負担の問題として対応することが適切であると考えられます。その場合、運営会社の利用事業者に対するイベント会場を提供する義務の反対債務である利用事業者の運営会社に対する代金債務は、消滅することになるものと考えられます。
なお、裁判上でも「損害の公平な分担」が考慮される場合があり、当事者間で話し合いにより解決できることが望ましいと考えられます(以上につき中野明安「新型コロナウィルス感染症拡大に伴う法務対応」Business Law Journal(2020.5 P47)参照)
Q9
あるイベントを主催した事業者ですが、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、イベントを中止しました。すでに販売済みのチケットの払い戻しをしなければなりませんか?
A9
イベントの中止により、主催者側のイベントを提供する義務は履行不能に陥っていると考えられます。
イベントが中止となった場合でもチケット代を返還しないという規定があった場合にはその規定によることになります。ただし、その規定が消費者契約法第10条(①法令中のいわゆる任意規定が適用される場合に比べ、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者の契約の条項であって、②民法1条2項に規定する信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効であるとしています。)に違反しないかどうか問題となりますが、イベントが中止となった場合でも主催者側は準備費用を負担しており、イベントを開催しないにしても、準備していた参加賞の提供、次回イベントの参加振替など消費者の不利益を緩和する措置が取られている場合には、必ずしもチケット代を返還しないことが信義則違反になるとは言えないケースもあると思われます。
逆に中止の場合にチケット代を返還しないという規定がない場合には、まず、イベント中止(履行不能)に関して主催者と参加者の双方に帰責事由がないか問題となりますが、基本的には帰責性はないと判断される可能性が高いと考えられます。次に、帰責性がない場合には、(契約を令和2年4月1日より前に締結した場合には)改正前民法536条1項が適用されます。これにより、主催者側のイベントを提供する義務の反対債務である参加者側のチケット代金の支払義務は消滅することになります。つまり、主催者側は、基本的に受領したチケット代の返還をすべきとなるものと考えられます。(契約を令和2年4月1日以降に締結した場合には)改正後民法536条1項が適用されます。これにより、参加者側はチケット代金の支払を拒絶することができ、最終的には契約を解除して代金支払義務を免れることができます。つまり改正の前後を問わず、主催者側は、基本的に受領したチケット代の返還をすべきとなるものと考えられます。

改正民法における危険負担の内容については、Q1をご参照ください。
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