経営お役立ちコラム

2020.06.01 【契約】

中小事業者等への「しわ寄せ」問題等に関する
Q&A集
依頼された仕事を受ける場合、雇用契約と業務委託契約のどちらが良いか。

弁護士 古賀 聡

Q
依頼された仕事を受ける場合、契約形態は、雇用契約と業務委託契約のどちらが良いのでしょうか。
A
双方の契約形態にはそれぞれメリットとデメリットがあるため、どちらの契約形態が良いのかは一概にはいえません。契約をする際は、予定している仕事の仕方と整合性のとれた契約形態とするよう、仕事の依頼主との間できちん協議して、書面に残しておくのが望ましいです。

解説

  1. 会社や個人から業務の依頼を受け働いて報酬を得る場合、主な契約形態としては、雇用契約と業務委託契約の2つが挙げられます。
    では、仕事を受ける側にとって、どちらの契約形態が有利なのでしょうか。
  2. 雇用契約と業務委託契約はそれぞれ、次のように、仕事を受ける側にとってのメリット・デメリットがあります。
    まず、雇用契約については、仕事の依頼主(雇用契約の場合、「使用者」といいます)から契約を解除(解雇)され辛い、依頼主(使用者)が一定の範囲で仕事を受ける側(雇用契約の場合、「労働者」といいます)の安全に配慮する義務がある、最低賃金が法律によって定められている、トラブルが起きた場合に労働組合を通じた交渉をすることができる等といった仕事を受ける側(労働者)への保護が充実しているというメリットがある一方、働く場所や時間、作業方法について依頼主(使用者)から指揮命令を受ける、業務命令に従わない場合に懲戒処分等のペナルティが課される等といったデメリットがあります。
    これに対し、業務委託契約の場合、契約に反することはできないという縛りはあるものの、雇用契約のときに課されるような強力な指揮命令に服することはないというメリットがありますが、他方で、雇用契約で受けられるような仕事を受ける側への保護は受け辛いです。
  3. 以上のように双方の契約形態にはそれぞれメリットとデメリットがあるため、仕事を受ける側(労働者)にとってどちらの契約形態が良いのかは一概にはいえない、ということになります。
    もっとも、例えば、依頼主から働く場所や時間、作業方法について強力な指揮命令を受け、雇用契約といえるような実態であるにもかかわらず、契約書上は業務委託契約となっているという状態は、契約書と実態の整合性が取れていないということになり、トラブルの元です。
    そのため、契約をする際は、予定している仕事の仕方と整合性のとれた契約形態とするよう、依頼主との間できちんと協議して、書面に残しておくことが望ましいです。また、契約締結後、取引中に、契約締結の際に予定していた仕事の仕方とずれが生じてきた場合には、依頼主への異議、契約改訂の申し入れや契約解除等の検討を視野に入れても良いかもしれません。
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