経営お役立ちコラム

2020.08.25 【契約】

中小事業者等への「しわ寄せ」問題等に関する
Q&A集
クライアントが報酬の支払いを拒否/遅延した場合の対応方法

弁護士 間嶋 修平

【2020.10.06現在】

Q
A社(資本金500万円)は、電子部品及び電子製品の販売を主な事業とするB社(資本金1億円)から電子部品及び電子製品の組立・加工を受託し、成果物を指定の納期に納入しました。報酬の支払期日は、納入日から30日以内と定められていましたが、B社は、当該期日の経過後も報酬を支払ってくれません。どのように対応すればよいでしょうか。
A
まず、A社としては、報酬を回収すべく、相談窓口等を通じて弁護士に相談の上、内容証明郵便等による支払の催告、訴訟提起、仮差押え、反対債権がある場合には相殺、その他担保権実行、連帯保証人への請求等の債権回収手段を検討することが考えられます。
また、B社の行為は、下請法で禁止される支払遅延に該当するため、A社としては、下請法違反を主張し任意の交渉を行うほか,B社が交渉に応じない場合には,公正取引委員会、中小企業庁に調査・指導を求め相談することが考えられます。

(解説)
  1. B社が支払期日の経過後も報酬を支払わない場合、A社としては、どのように対応すべきでしょうか。
  2. まず、A社としては、報酬を回収すべく、相談窓口等を通じて弁護士に相談の上、内容証明郵便等による支払の催告、訴訟提起、仮差押え、反対債権がある場合には相殺、その他担保権実行、連帯保証人への請求等の債権回収手段を検討することが考えられます。
  3. また、報酬の支払遅延は、下請法4条1項2号に違反する可能性があります。
    前提として、下請法の適用の有無は、①取引当事者の資本金又は出資の総額の区別(3億円超、1千万円超3億円以下、5千万円超、1千万円超5千万円以下)、②取引の内容(製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託)の2つの側面から判断されます。
    まず②について、本件取引は、電子部品及び電子製品の組立・加工、すなわち、B社が業として販売を行う電子部品及び電子製品の製造をA社に委託することを内容とするため、「製造委託」に該当します(下請法2条1項)。
    次に①について、A社は、資本金1千万円以下、B社の資本金が1千万円超3億円以下ですので、それぞれ下請事業者、親事業者の要件を充たしています。
    したがって、本件取引には、下請法の適用があるため、B社が、支払期日の経過後も報酬を支払わないことは、理由の如何を問わず、下請法4条1項2号に違反することになります12
    よって、A社としては、2以外の方法として、B社の支払遅延行為が下請法4条1項2号に違反することを指摘した上で、報酬の支払を求めるなど任意の交渉を行うほか、B社が交渉に応じない場合には、調査・指導を求めて、公正取引委員会、中小企業庁や各経済産業局その他相談窓口へ相談することを検討することが考えられます。
  4. また、本件とは異なり、下請法の適用がない場合であっても、B社の支払遅延行為は、優越的地位の濫用(独占禁止法2条9項5号ハ)を理由とする独占禁止法違反が認められる可能性もありますので、参考にしてみてください。
  5. 以上のとおり、報酬の支払遅延への対応方法は種々考えられますが、予防策として、契約書や3条書面(下請法3条に基づき、委託内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項が記載された書面)において、報酬金額、支払期日や支払方法、支払遅延の場合の遅延損害金等のペナルティなどを明記しておくと良いでしょう。
東京弁護士会 中小企業法律支援センター
https://www.toben.or.jp/form/chusho1.html

公正取引委員会・下請法に関する相談・申告等窓口
https://www.jftc.go.jp/shitauke/madoguti.html

中小企業庁・下請法申告受付窓口
https://mm-enquete-cnt.meti.go.jp/form/pub/jigyokankyo/shitaukeho_shinkoku
  1. 1 下請法4条1項2号の「支払期日」は、本件のように①物品等の受領日から60日内に支払期日が定められている場合には、その支払期日、②物品等の受領日から60日を超えて支払期日が定められている場合には、受領日から60日目、③当事者間で支払期日が定められていない場合には、その物品等の受領日、というように3つのパターンがある。
  2. 2 成果物に瑕疵があるなど、下請事業者の責に帰すべき事由により、やり直しをさせる場合は、やり直し後の成果物の受領日が支払期日の起算日となるため、当初の支払期日までに支払う必要はない。
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