経営お役立ちコラム

2020.10.01 【その他】

従業員の起こした交通事故

弁護士 齋藤 北写

Q.
製造業の会社を経営しているのですが、会社で雇用している従業員が会社の自動車で納品に向かう途中で、歩行者と接触する交通事故を起こしてしまいました。被害者の方は事故を起こした従業員だけではなく、会社に対しても損害賠償の請求をしてきました。この場合、会社も損害賠償をしなければならないのでしょうか。
A.
使用者責任
自動車を運転していた従業員の不注意(過失)で、歩行者と接触する交通事故を起こし、これによって被害者に損害が生じた場合、その従業員自身は、民法上、不法行為として損害賠償責任を負うこととなります(709条)。
それでは、直接の交通事故の当事者ではない会社が損害賠償責任を負うことはあるのでしょうか。
民法上、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」(715条1項本文)とされており(これを使用者責任といいます)、業務中の事故であれば、会社は損害賠償責任を負う可能性があります。
なお、「使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき」は責任を負わないとされていますが(同条ただし書)、免責は容易には認められません。

運行供用者責任
また、自動車損害賠償保障法(自賠法)では、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。」(3条本文)とされており(これを運行供用者責任といいます)、会社は、運行供用者として損害賠償責任を負う可能性があります。
なお、運行供用者に該当するかどうかは、基本的には、①運行を支配する立場にあるか(運行支配)、②運行により利益を得る立場にあるか(運行利益)という観点から判断されます。
会社所有の自動車で、業務中に交通事故を起こしたケースでは、基本的には、会社が運行供用者として、損害賠償責任を負うこととなると考えられます。

まとめ
以上のとおり、先ほどの事例では、会社は、使用者責任又は運行供用者責任に基づいて会社が損害賠償責任を負う可能性があります。会社経営者の方は、こうした損害賠償リスクを減少させるために、従業員に交通安全の意識を喚起するように社内研修をするなどして指揮監督するとともに、任意保険にしっかり加入しておく必要があります。また、過労などから交通事故が発生することを防止するために、適切な労務環境を確保することが望ましいでしょう。