経営お役立ちコラム

2020.11.04 【契約】

中小事業者等への「しわ寄せ」問題等に関する
Q&A集
クライアントから一方的な契約打ち切り(解除)を受けた場合、
契約の継続や補償を求めることができるか。

弁護士 大上 和貴

Q
仕事を受注した取引先から、一方的に契約の打切りを通告されました。契約の継続や補償を求めることはできないのでしょうか。
A
業務委託取引では発注者側に中途解約の自由が認められるのが原則であるものの、事情次第では、契約の継続を求められることも考えられます。また、契約の性質その他の事情により、報酬の一部の支払や損害の賠償を求めることができる場合があります。

(解説)

  1. 取引先との契約で中途解約や終了等について定めていれば基本的にそれに従うことになるため、契約書の中に中途解約等に関する規定があるか確認しましょう。また、補償に関しても、契約書に中途解約等の場合の補償に関する条項があれば基本的にそれに従うことになりますので、同様に契約書の内容を確認するようにしましょう。もっとも、以下に述べるとおり、報酬や損害賠償の請求の可否を検討するにあたっては、契約の性質に応じて民法の規定を踏まえた考慮も必要です。
  2. 業務委託取引には、請負契約としての性質を有するものと、準委任契約としての性質を有するものがあります。両者の違いは、簡単に言えば、請負契約は、ある仕事を完成することを約束する契約であるのに対し、準委任契約は、一定の事務処理を行うことを約束する契約であるということです。
    契約の性質が準委任契約の場合には、両当事者がいつでも解除することができるとされ(民法656条、651条1項)、他方、契約の性質が請負契約の場合、注文者は、いつでも損害を賠償して契約を解除することができるとされています(民法641条)。そのため、発注者側の事情による契約の解除そのものは認められるのが原則であり、本件設問のような場合も、契約の継続を求めることは難しい場合が多いでしょう。
    しかし、契約上または民法上の解除権の行使も無制限に認められるわけではなく、権利の濫用となる場合(民法1条3項)や公序良俗違反(民法90条)となる場合には、契約解除が認められないことも考えられます。本件設問でも、解除権の濫用となるような事情が認められれば、契約の継続を求められることがあるでしょう。
  3. 次に補償に関して、打切りまでに遂行した業務に対する報酬については、(準)委任契約では受任者は、すでにした履行の割合に応じて報酬を請求することができるとされています(民法648条3項2号)。また、何らかの成果の達成が報酬の支払の要件となっているような委任契約については、成果が得られる前に契約が解除された場合、受任者は、すでにした委任事務の結果が可分でその部分によって委任者が利益を受けるときは、その利益の割合に応じて報酬を請求することができるとされています(民法648条の2第2項、634条)。
    請負契約についても、契約が仕事の完成前に解除された場合、請負人は、すでにした仕事の結果が可分でその部分によって注文者が利益を受けるときは、その利益の割合に応じて報酬を請求することができるとされています(民法634条)。
    したがって、本件設問のような場合も、取引打切りまでに遂行した業務に対する報酬を請求することが考えられます。
    また、中途解約までに支出した費用などについての補償は、委任契約では、契約を解除した当事者は、相手方に不利な時期に契約を解除した場合には、原則として、相手方に生じた損害を賠償しなければなりません(民法651条2項1号)。契約の性質が請負契約の場合も、注文者は、任意に契約を解除するには、損害を賠償することが必要となります(民法641条)。
    したがって、本件設問でも、取引先に対し、解除の時点までに当該仕事のために支出していた費用等について、損害の賠償を請求することが考えられます。
  4. 以上のとおり、契約書を締結していない場合や、締結した契約書に解除や補償に関する定めがない場合でも、取引先に対して報酬の一部の支払や損害賠償の請求をすることができるケースが多いといえます。しかし、そのような場合でも、先方との間で具体的な報酬額や損害額等について争いとなる可能性は高いといえますので、そうした事態をできる限り防ぐために、中途解約の制限や、契約が解除された場合の具体的な補償額やその算定方法、支払方法等について明確に定めた契約書を締結しておくことが望ましいといえるでしょう。