経営お役立ちコラム

2021.01.25 【契約】

中小事業者等への「しわ寄せ」問題等に関する
Q&A集
クライアントが通常支払われる対価に比べて著しく低い報酬を要求してきた場合の対応方法

弁護士 間嶋 修平

Q
ウェブサイト制作会社であるA社(資本金4億円)は、自社ウェブサイトのデザインの制作業務の一部をフリーランスのウェブデザイナーであるBに委託しているところ、Bは、A社の追加要望を反映させることで制作費用が当初の見積りよりも高くなることが判明したため、下請代金の引上げを求めました。
しかしながら、A社は、下請代金の引上げを拒否し、通常支払われる対価1を大幅に下回る当初の見積価格を下請代金の額と一方的に定めました。Bとしては、どのように対応すればよいでしょうか。
A
A社の行為は、下請法で禁止される買いたたき2に該当するため、Bとしては、下請法違反を主張し任意の交渉を行うほか、A社が交渉に応じない場合には、公正取引委員会、中小企業庁その他相談窓口に調査・指導を求め相談することが考えられます。

(解説)

  1. A社が下請代金を決定する際に、その地位を利用して、通常支払われる対価に比べて著しく低い額をBに押し付けることは、下請法4条1項5号等に違反する可能性があります。そのような場合、Bとしては、どのように対応すべきでしょうか。
  2. 前提として、下請法の適用の有無は、①取引当事者の資本金又は出資の総額の区別(3億円超、1千万円超3億円以下、5千万円超、1千万円超5千万円以下)、②取引の内容(製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託)の2つの側面から判断されます。
    まず②について、本件取引は、ウェブサイト制作会社であるA社が業として行う自社ウェブサイトのデザインの制作業務の一部をBに委託することを内容とするため、「情報成果物作成委託」に該当します(下請法2条3項)。
    次に①について、A社の資本金が3億円超、Bが個人事業主ですので、それぞれ親事業者、下請事業者の要件を充たしています(下請法2条7項1号、同条8項1号)。
    したがって、本件取引には、下請法の適用があります。
  3. その上で、買いたたきに該当するか否かは、ⅰ)対価の決定方法(下請代金の額の決定に当たり、下請事業者と十分な協議が行われたかどうかなど)、ⅱ)対価の決定内容(差別的であるかどうかなど)、ⅲ)通常支払われる対価と当該給付に支払われる対価との乖離状況、ⅳ)当該給付に必要な原材料等の価格動向などの要素を総合考慮して判断します。
    本件について、A社は、制作費用が当初の見積りよりも高くなることが判明し(ⅳ)、Bから下請代金の引上げを求められたにもかかわらず、下請代金の額の見直しをせず、通常支払われる対価を大幅に下回る当初の見積価格を下請代金の額と一方的に定めています(ⅰ~ⅲ)。このように、A社が下請代金を決定する際に、その地位を利用して、通常支払われる対価に比べて著しく低い額をBに押し付けることは、下請法4条1項5号に違反することになります。
  4. よって、Bとしては、A社の行為が下請法4条1項5号に違反することを指摘した上で、下請代金の額の見直しを求めるなど任意の交渉を行うほか、A社が交渉に応じない場合には、調査・指導を求めて、公正取引委員会、中小企業庁その他相談窓口へ相談することを検討することが考えられます。
  5. また、本件と異なり、下請法の適用がない場合であっても、A社の買いたたき行為は、優越的地位の濫用(独占禁止法2条9項5号ハ)を理由とする独占禁止法違反が認められる可能性がありますので、参考にしてみてください。
  6. 以上のとおり、買いたたきへの対応方法は種々考えられますが、予防策として、契約書や3条書面(下請法3条に基づき、委託内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項が記載された書面)において、下請代金が不相当となった場合の協議条項、下請代金の額の算定方法などを明記しておくと良いでしょう。
東京弁護士会 中小企業法律支援センター
https://www.toben.or.jp/form/chusho1.html

公正取引委員会・下請法に関する相談・申告等窓口
https://www.jftc.go.jp/shitauke/madoguti.html

中小企業庁・申告情報受付窓口(下請取引)
https://www.shinkoku.go.jp/shinkoku/menu
  1. 1 「通常支払われる対価」とは、①同種又は類似の給付の内容(又は役務の提供)について実際に行われている取引の価格(市場価格)、又は、②市場価格の把握が困難な場合は、同種又は類似の給付の内容(又は役務の提供)に係る従来の取引価格をいいます。
  2. 2 「買いたたき」と「減額」の関係については、前者は、親事業者が下請事業者に発注する時点で生ずるものであるのに対し、後者は、一旦決定された下請代金の額を事後的に減じるものであるという違いがあります。