経営お役立ちコラム

2021.02.26 【契約】

中小事業者等への「しわ寄せ」問題等に関する
Q&A集
業務委託契約書の主なチェックポイント

弁護士 髙橋 幸宏

Q
クライアントから業務委託契約書のひな型が送られてきた。主にどのような事項に注意して検討すべきか。
A
業務委託契約には様々なものがあり、一概には言えませんが、①業務の内容、②報酬の定め、③検収、④知的財産権の取扱い、⑤損害賠償、⑥解除等に注意して検討する必要があります。
  1. 各条項の解説
    1. (1)業務の内容
      業務の内容を明確に記載しておかなければ、委託者との間で想定する業務内容に齟齬が生じ、想定よりも過大な業務を命じられるおそれや、受託者が認識する業務を完成しても報酬を受け取れないおそれがあります。そのため、業務内容が具体的かつ明確に記載されているかを、第一に確認する必要があります。
    2. (2)報酬の定め
      報酬額(または報酬額の算定方法)のみならず、支払期限や支払方法を確認する必要があります。消費税や振込手数料を含め、明確に記載されているか確認してください。
      また、業務内容が膨大で作業期間が長期にわたる場合には、後に報酬が支払われないことによる不利益が大きいことから、業務の途中で報酬が一部支払われる条項にすることが望ましいでしょう。
    3. (3)検収
      検収とは、成果物が条件を満たしているかを委託者がチェックして、受領することを言います。
      検収の期間が長期であると、受託者は、長期間不安定な地位に置かれることとなります。そのため、受託者として契約書を確認する場合は、検収の期間を過度に長く設定せず、また、一定の期間を過ぎても委託者から連絡がないときには「検収が完了したものとみなす」旨の条項を設けるとよいでしょう。
    4. (4)知的財産権の取扱い
      業務委託契約の種類によっては、業務遂行の過程で特許や著作権等の知的財産権が生じることがあるため、これが委託者と受託者のどちらに帰属するかを定めておく必要があります。
      その際、成果物そのものの権利が委託者に移転するとした場合には、受託者が従前から保有していた知的財産権や受託者が用意したテンプレート等を、将来受託者が使用できなくなるおそれがあります。そこで、従前から受託者が保有していた知的財産権や他の案件に共通に利用するノウハウ等は、委託者に移転しない旨を規定するとよいでしょう。
    5. (5)損害賠償
      委託者が成果物をもとに新たな製品を製造する場合などに、その成果物に不具合が存在すれば、受託者の予想を超えて損害が拡大するおそれがあります。そこで、受託者としては、損賠賠償の範囲を限定する旨の条項を設けることで、過大な損害賠償請求のリスクを回避することが望ましいでしょう。例えば、損害賠償額の上限を報酬額とする、損害賠償請求の対象を受託者に故意・重過失がある場合に限定する等の規定が考えられます。
    6. (6)解除
      受託者にとっては、軽微なミスや違反により一方的に契約が解除される事態は好ましくないため、ある程度の期間を設けて是正を勧告し、それでも改善されなければ契約を解除する旨の規定が望ましいでしょう。
    7. (7)その他の条項
      これまで指摘した条項以外にも、契約期間、契約不適合責任、再委託の可否、秘密保持条項等について、業務委託契約の種類・内容に即した検討を行う必要があります。
  2. 実務上の対応
    曖昧な条項や受託者に著しく不利な条項を放置しておくと、将来、受託者に極めて過大な負担が生じかねません。そこで、実際の契約締結場面では、曖昧な条項はきちんと修正し、著しく不利な条項はきちんと拒絶することが重要です。
    また、委託者が作成した業務委託契約書を確認するだけでなく、自ら業務委託契約書を作成することも検討してください。なぜなら、自ら作成した業務委託契約書であれば、自らに著しく不利な条項は存在しないからです。インターネット上のひな形を参考に業務委託契約書を作成する場合には、そのひな形が委託者・受託者いずれの立場で作成されたものか(委託者に有利に作成されたものか、受託者に有利に作成されたものか)に注意しながら、契約書を作成してください。
東京弁護士会 中小企業法律支援センター
https://www.toben.or.jp/form/chusho1.html