経営お役立ちコラム

2021.02.26 【新型コロナウイルス関連】

新型コロナウイルス対策に関するQ&A(事業の廃業・清算)

【2022.12.15現在】

Q1
私はオーナー経営者ですが、コロナ禍で売上が急落し、緊急融資などで一時的に資金繰りは持たせましたが、コロナが収束せず売上が回復する見込みは現状ではありません。高齢であるためいつまで社長を続けられるか分からず、後継者もおらず、事業を引き取ってくれる先を見つけるのも難しいと思われます。会社を廃業や清算することも検討すべきかと思っていますが、どのような点に留意すべきでしょうか。
A
事業承継をする場合や、廃業、清算を検討する場合には、決断を早く行うことが必要です。
特に売上が落ちている状態の場合、運営を続けることによってキャッシュが流出してしまい、債権者に本来弁済できたものができなくなってしまうことや、廃業清算にあたって必要な費用すらなくなってしまうこともあります。
状況が悪化すれば、最終的には破産手続の選択しかなくなりますが、破産手続を執る場合でも一定の費用は必要です。
また、早めに着手し、どのような手続を選択すべきか弁護士に相談すれば、状況に応じ複数の選択肢があることが通常ですので、より関係者に迷惑をかけない会社の終わり方をすることも可能です。
このように、まずは早めに検討に着手し、弁護士等の専門家に相談することが重要です。
Q2
私の会社は資産超過で、売掛金や在庫などを売却処分すれば、債務を完済することが可能です。今のうちに会社を清算しようと考えていますが、注意すべき点を教えてください。
A
会社を清算する場合、株主総会で解散の特別決議(出席株数の3分の2)を得て清算人を選任し、清算人のもとで清算手続を行うことになります。
まず、会社の株主構成を確認し、この特別決議を得ることができることが必要です。
また、会社の債務の弁済がすべて終わり、残余財産がある場合には、残余財産を株主に分配することになりますが、この配当については、株主はみなし配当課税や譲渡損益課税の対象となります。
また、解散事業年度や清算事業年度においては、消費税、住民税・事業税の納税義務が発生することが多いため、清算を行おうとする時点における債務だけではなく、これらの税金が発生する可能性を念頭において清算手続を行うことが必要です。
Q3
私の会社は金融機関の借入金が大きく、コロナ禍で売上が急減し、緊急融資などで一時的に資金繰りは持ち直しましたが、売上が回復せず、現状ではあと数か月で債務の返済ができなくなってしまいます。これ以上事業を続けるよりは、一旦会社を清算して、再起を図りたいと思います。会社を清算するにあたって、どのような点に留意すべきでしょうか。
A
法人の運営が立ち行かない状態になっている場合、まずは現金の流出を止め、早期に清算の準備に移ることが必要です。
自身で会社の資産を処分してキャッシュを作ることももちろんできますが、最終的に破産手続に移行した場合、処分した価格によっては破産管財人からその処分行為を否認されるリスクがあること、債権者への弁済を法的優先順位や債権者平等に留意して行う必要があることから、債務超過の可能性がある場合、弁護士への依頼は必須です。
従業員の賃金は破産の場合に優先性が認められていますが、仮に全額の支払ができないとしても、破産手続に入れば、独立行政法人労働者健康安全機構が実施する未払賃金立替制度を用いて、従業員の賃金や退職金を一定程度補償することができます。
何の手続もとらず放置をしてしまうと、取引先、従業員や債権者らの混乱は著しく、必ず清算のための手続を取ることが必要です。
また、早期に清算手続に入れば、あなた自身の信用毀損も最低限に抑えられ、再起のための準備も早く着手することができます。放置したり夜逃げをすることは、状態を悪化させるだけで関係者にも迷惑をかけ続け、自身の再起もできなくなりますので絶対にしてはいけません。
Q4
会社の資金ショートが迫り、会社の破産はやむを得ないと考えています。破産手続をするにあたって注意すべき点や、手続の流れについて教えてください。
A
法人の破産手続は、通常①弁護士への破産申立手続の委任②弁護士から債権者への受任通知③弁護士による破産申立ての準備と申立て④破産手続開始決定⑤破産管財人による財産の管理処分⑥債権届出とその調査確定手続⑦配当という流れを取ります。
弁護士が債権者に受任通知を出すと、債権者からの取立てが止まります。破産手続開始決定時に破産管財人が選任されます。破産管財人は、会社財産を換価し債権者に配当の上、会社の清算手続である破産手続が終了します。
弁護士への破産申立委任後は、その後の破産手続を適正に遂行するため会社財産の管理処分は弁護士の判断に任せるべきです。
また、会社代表者等は管財人に対し破産に関する事情を説明する義務を負います。
Q5
私の経営している会社は債務超過で、資金ショートが迫っており、後継者もいないので、会社を清算したいのですが、取引先に迷惑を掛けたくないので破産を何としても避けたいです。破産をしないで清算をする方法はないのでしょうか。
A
取引先の債務を完済して、対金融機関の債務免除を受けて清算するためには、金融機関の同意を得て私的整理手続で清算することを検討するのがよいでしょう。2022年(令和4年)3月に策定・公表された「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」においても、廃業型私的整理手続が定められました。
手続の進め方としては、①中小企業活性化協議会(旧名称:中小企業再生支援協議会)や、②特定調停手続を選択することが考えられます。②に関しては、日本弁護士連合会が策定した「特定調停スキーム」(廃業支援型)を活用するとよいでしょう(URLは後掲)。
私的整理手続が成立するためには、破産よりも金融機関に対する弁済額が高くなること、金融機関の同意を得ることなどが要件となります。詳しくは、手続に通じた弁護士に相談することをお勧めします。
https://www.nichibenren.or.jp/activity/resolution/chusho/tokutei_chotei.html
Q6
私は会社を経営していますが、金融機関に多額の連帯保証債務を負っており、経営が苦しいため会社を破産させることを考えています。会社が破産をするのであれば、社長で連帯保証人である私も破産をしなければならないのでしょうか。他に債務を整理する方法はないのでしょうか。
A
2014年(平成26年)2月に策定・公表された「経営者保証に関するガイドライン」を活用すれば、破産をせずに連帯保証債務の免除を受けることが可能になります。ただし、このガイドラインは法律ではなく、金融機関に自主的に遵守を求めるガイドラインですので、金融機関の同意を得ることが必要になります。同ガイドラインにより債務免除を受ける要件としては、①経済合理性があること(破産をするときよりも弁済額が少なくならないこと、②誠実であること(資産を適切に開示すること)、③免責不許可事由がないこと、等があります。保証人としては、特に②の誠実性、情報を適時適切に開示して、金融機関の理解を得ていく姿勢が鍵を握ります。
同ガイドラインを使って債務免除を受ける際に保証人に残せる資産としては、破産法上の自由財産(現金99万円など)のほかに、回収見込額の増加額の範囲内(ガイドラインによる弁済額と破産による配当額の差額)であれば、生活に必要な現預金や華美でない自宅を残せます。オーバーローン(不動産の価値よりも債務額の方が大きい)の自宅不動産であれば、ローン債権者との協議により、残すことも可能になります。
同ガイドラインを使ってより多くの資産を残すためには、保証債権者である金融機関等に対して、できるだけ多くの弁済を行うことが大切になります。赤字会社で資金が流出している状況であれば、できるだけ早く廃業・清算を行うことが会社の資産流出を防ぎ、弁済原資を確保することにつながります。そのため、廃業・清算について悩まれている場合には、できるだけ早めに弁護士に相談していただくことが重要になります。
もっとも、「会社と保証人に財産がないため会社は破産せざるを得ず、保証人個人からの弁済もできない」という場合であっても、同ガイドラインを使って個人破産を回避して保証債務を整理することは可能です。2022年(令和4年)3月に「廃業時における「経営者保証に関するガイドライン」の基本的な考え方」が公表され、主たる債務や保証債務で弁済する金額が無い弁済計画(いわゆるゼロ弁済)も同ガイドライン上許容されるとの考え方が示され、さらに同ガイドラインが活用されやすくなってきています。
Q7
私は会社を経営しており、金融機関に多額の連帯保証債務を負っています。経営が苦しいため会社を破産させ、自分自身も経営者保証ガイドラインは使わずに破産をすることにしました。個人破産をするにあたって注意すべき点や、手続の流れを教えてください。
A
通常、会社代表者個人の破産手続も、会社と一緒に破産手続を行うことが多く、手続の流れ自体は法人の破産手続と大きくは変わりません。なお、東京地裁破産部の運用では、代表者個人のみの破産申立は事実上受付されず、法人と一緒に破産手続を申し立てることが要求されます。また、法人のみ申し立て、後に代表者個人の破産申立を行うと、改めて予納金の納付が必要になりますので、手続費用の負担が嵩みます。
もっとも、法人は破産手続が終了し、法人の存在がなくなるのとは異なり、個人は存在をし続けますので、裁判所による免責許可決定を得なければ残債務の弁済義務を免れることはできません。
財産の隠匿や一部の債権者への弁済、破産管財人に対する説明義務違反などの免責不許可事由があると免責許可決定を受けられないこともあります。
財産を隠す等の行為は、免責の決定を得られなくなるだけではなく、破産法上の刑罰を科される可能性もあるため、絶対にやってはいけません。
Q8
私は法人化をせずに個人で事業を営んでいますが、このコロナ禍で売上が急落し、金融機関への借入金の返済も厳しい状況です。債務を整理するための方法はないのでしょうか。
A
大規模自然災害の被災者となった個人のための金融債務の私的整理に関する準則として「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」が2016年(平成28年)4月1日から運用が開始されました。この新型コロナウイルス禍により財務的窮境に陥った個人が急増したことを受けて、「『自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン』を新型コロナウイルス感染症に適用する場合の特則」(以下「自然災害ガイドライン特則」といいます。)が2020年(令和2年)10月30日に策定・公表され、同年12月1日から適用が開始されています。
自然災害ガイドライン特則によれば、新型コロナウイルス禍により対金融機関の既往債務を弁済することができないか、弁済することができないことが確実に見込まれる個人は、一定の要件の下で、一定の資産を残して、対金融機関の債務の免除をうけることが可能になりました。また、破産と異なり、自然災害ガイドライン特則の利用は、個人信用情報登録機関(いわゆるブラックリスト)に登録・報告されることがないというメリットもあります。金融機関との協議にあたっては、「登録支援専門家」による無料の手続支援が受けられます。詳しくは、手続に通じた弁護士に相談することをお勧めします。
ご利用にあたって

各記事は執筆時点のものであり、記事内容およびリンクについてはその後の法改正などは反映しておりません。