経営お役立ちコラム

2021.07.12 【契約】

中小事業者等への「しわ寄せ」問題等に関する
Q&A集
クライアントから嫌がらせ(セクハラ等)を受けた場合の対応方法

弁護士 大上 和貴

Q
取引先の営業担当者から、2人での食事や遠出の誘いを受けています。お断りの意向を何度も伝えているにもかかわらず、誘いが止むことはなく、むしろ要求がエスカレートしています。何か対応を考えられないでしょうか。
A
取引先の担当者の行為は、いわゆるセクシャルハラスメントであり、不法行為が成立する可能性があり、取引先が担当者の行為を容認し、何ら改善策を講じないようであれば、取引先にも不法行為責任発生の余地があります。行為がエスカレートし悪質なものとなれば、迷惑行為防止条例違反や強制わいせつ罪などの刑事責任につながる可能性もあります。担当者や取引先に対して、それらのことを指摘し、今後の行為を改めるように要求するとよいでしょう。

(解説)

  1. ハラスメントとは、他人との間に存在する関係や事由を背景として、相手方の意に反する行為をするなど、何らかの嫌がらせをすることであり、セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、マタニティハラスメントなどの類型が論じられます。一般的に、職場の上司と部下など、雇用関係の文脈で議論されることが多いものの、設問の事例のように取引先との関係であっても同様の議論が成り立ちます。
  2. ハラスメントのような嫌がらせ・迷惑行為は、社会的に容認できない不当なものなど、その手段・態様次第では違法性が認められる場合も出てきます。
    ハラスメントは、これを受けた方に対して精神的・肉体的・財産的な損害(例えば、セクシャルハラスメントであれば不快な感情・経験を強いることや、パワーハラスメントであれば傷害・疾病を及ぼすこと)を与えることがあります。このようなときは、ハラスメントは、故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害する行為として不法行為に該当します(民法第709条)。また、他人の不法行為を唆し、又は幇助した者には、共同の不法行為者としての責任(民法第719条第1項)が、被用者が事業の執行について不法行為をした場合で、その選任・監督について相当の注意をしていない使用者には使用者としての不法行為責任(民法第715条第1項)が発生します。
    設問の事例でも、性的な意味合いが高まるなど、要求の程度が過剰なものとなった際には営業担当者の行為には不法行為が成立するでしょう。営業担当者の行為について取引先が事情の確認や必要に応じた指導をすべき状況であれば、漫然と事態を放置したようなときは、担当者による行為を容易にしたものとして共同不法行為責任が成立する余地があるものと考えます。実際上の対応としては、このような不法行為責任の発生の可能性について言及しつつ、営業担当者に対しては行為を止めるよう要求し、取引先に対しては営業担当者の行為の改善を求めるように要求していくべきと考えます。
  3. 嫌がらせ・迷惑行為がエスカレートすると、刑事上の責任にも発展する可能性があります。例えば、セクシャルハラスメントであれば、痴漢行為の禁止やつきまとい行為等の禁止(東京都迷惑行為防止条例第5条第1項、第5条の2第1項)の違反や強制わいせつ罪(刑法第176条)に、パワーハラスメントであれば、傷害罪や暴行罪(刑法第204条、第208条)に該当することが出てくるでしょう。さらに、取引先との関係では、迷惑行為・嫌がらせによって取引の継続が困難となった場合には、契約を解約することなども手段として検討に値するでしょう。
    設問のような事例で営業担当者や取引先への対応を考えるにあたっては、これらの主張も視野に入れて検討するとよいでしょう。