経営お役立ちコラム

2021.10.29 【労務】

同一労働・同一賃金に関する
Q&A集
「同一労働同一賃金」は大企業だけを対象にした制度なのですか。

弁護士 髙橋 幸宏

Q
「同一労働同一賃金」は大企業だけを対象にした制度なのですか。
A
「同一労働同一賃金」とは、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

(解説)

  1. はじめに
    「同一労働同一賃金」とは、同一企業内におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差を解消する制度です。
  2. 中小企業への適用
    「同一労働同一賃金」の目的は、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられるようにし、ひいては多様な働き方を自由に選択できるようにすることにあります。この目的は、大企業だけでなく、中小企業(個人事業主を含む、以下同じ)で働く労働者にも当てはまるため、「同一労働同一賃金」は中小企業も対象となっています。
    「同一労働同一賃金」は、いわゆるパート有期法と改正労働者派遣法が根拠となっています。そして、パート有期法は、大企業は2020年4月1日、中小企業は2021年4月1日から施行されており、改正労働者派遣法は事業の規模にかかわらず2020年4月1日から施行されています。つまり、みなさまがこの記事をご覧になっている今現在、「同一労働同一賃金」は中小企業にも適用されているのです。
  3. 中小企業に求められる対応
    まだ「同一労働同一賃金」に対応していない場合には、早急に対応しなければなりません。以下、パートタイム労働者、有期雇用労働者と正社員との待遇差の是正について、厚生労働省作成の取組手順書をもとに、中小企業に求められる対応を簡潔に指摘します。
    1. 手順① 労働者の雇用形態を確認する
      パートタイム労働者や有期雇用労働者を雇用しているか確認します。
    2. 手順② 待遇の状況を確認する
      パートタイム労働者・有期雇用労働者を雇用している場合、正社員との間で、賃金(賞与・手当を含む)や福利厚生等の待遇に違いがあるか確認します。
    3. 手順③ 待遇に違いがある場合、待遇に違いがある理由を確認する
      パートタイム労働者・有期雇用労働者と正社員とで働き方や役割等が異なる場合には、それに応じて賃金(賞与・手当を含む)や福利厚生等の待遇が異なることはあり得ます。これら待遇の違いが、働き方や役割等の違いに見合った「不合理ではない」ものといえるかどうかを確認します。
    4. 手順④ 待遇に違いがある場合、待遇の違いが「不合理ではない」ことを説明できるようにする
      事業主は、正社員との待遇差の内容やその理由について労働者から説明を求められた場合には、これを説明しなければなりません。そこで、パートタイム労働者・有期雇用労働者について、その待遇の違いが不合理ではないと説明できるよう、あらかじめ整理しておきましょう。
    5. 手順⑤ 不合理な待遇差を改善する
      不合理な待遇差が存在する場合には、その待遇差を改善しなければなりません。厚生労働省が同一労働同一賃金ガイドラインを公表し、どのような待遇差が不合理であるか原則となる考え方を示しているので、参考にしてください。また、他の記事でも、不合理な待遇差を改善する施策について解説しておりますので、そちらも参考にしてください。
    以上の記事に関するご不明点、同一労働同一賃金を含む働き方改革への対応その他労務問題に関するご相談は、中小企業・個人事業主の法的支援を扱う「東京弁護士会中小企業法律支援センター」の相談窓口まで、お気軽にお問い合わせください。
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