経営お役立ちコラム

2021.11.10 【SDGs】

SDGs・ビジネスと人権に関するポリシー

東京弁護士会中小企業法律支援センター
SDGsプロジェクトチーム

  1. 行動理念
    私たち東京弁護士会中小企業法律支援センターSDGsプロジェクトチームは、国連で2015年に採択された、貧困、教育、人種・ジェンダー差別、気候変動、地球環境など様々な人権・社会問題を克服し、地球上の「誰一人取り残さない」(No one will be left behind)ことを目的とする「Sustainable Development Goals」(以下、「SDGs」)の理念と、同じく国連で2011年に採択された、すべての企業に国際的人権の尊重を求める「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下、「指導原則」)の趣旨に賛同し、個人としても組織としても、その普及と実践のために最大限の努力をします。
    また私たちは、法律分野における専門性とコンプライアンスに関する知見を活かして、中小企業が、SDGsの理念に共鳴し、すべてのステークホルダー(企業に関わる利害関係者)の基本的人権を尊重してそのウェルビーイング(全てにおいて満たされた状態)を実現することによってもたらされる企業リスクの低減と企業価値の増大を支援し、もって中小企業のサスティナブル(持続可能)な成長に貢献します。
  2. 行動指針
    私たちは、SDGsと指導原則の普及と実践のために、学習と研鑽に努め、自らの意識を改革し、人材の育成を図り、関係諸団体と連携の上、研究成果の発表とともに、レクチャーを行い、広報に取り組みます。
    また私たちは、SDGsが掲げる17の目標と169のターゲットについて、別表(1)記載の項目を中心に、これに取り組む中小企業を全力でサポートするとともに、指導原則及びこれに基づき策定された我が国の「ビジネスと人権に関する行動計画」(NAP)が定立する企業の人権尊重責任について、別表(2)(3)記載の項目を中心に、これに取り組む中小企業を積極的に支援することを目指します。
  3. 中小企業がSDGsと指導原則に取り組む意義とその影響力
    私たちは、我が国において企業数で99.7%、雇用者数で約70%を占める中小企業が、SDGsの実現に向けて動き出すことで、これまで取り残されていた社会的課題の解決、そして社会共通価値の創出に大きく寄与できるものと確信しています。
    中小企業がSDGsと指導原則に取り組むならば、ビジネスチャンスの拡大、企業リスクの低減、次世代有能人材の採用、負の事象が生じた場合のレジリエント(強靭)な回復などの好影響を生み出し、中小企業を持続的に成長させ、企業価値の向上と企業利益に繋がるばかりか、地域社会、日本、世界の人々にウェルビーイングをもたらし、地球のサスティナビリティに大きく貢献することになります。
  4. SDGsと指導原則に取り組む中小企業への全面的なサポートの宣言
    私たちは、東京弁護士会中小企業法律支援センターの設立理念に基づき、行政機関や民間各組織とも緊密なパートナーシップ(連携)を構築し、知見を高め、より多くの中小企業がSDGsと指導原則に取り組み持続的成長と企業利益を得られるよう、全面的にサポートすることをここに宣言します。

SDGs・ビジネスと人権に関するポリシー 別表

(1) SDGsの目的「誰ひとり取り残さない」(No one will be left behind)の実現のための行動指針
目標・ターゲット 行動内容
① 目標5「ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う」
ターゲット:5.1、5.5、5.c
女性に対するあらゆる形態の差別を撤廃し、管理職における女性の割合を高め、ジェンダー平等の促進ならびに女性の能力強化への取組み
② 目標8「包括的かつ持続可能な経済成長およびすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する」
ターゲット:8.2、8.5、8.7、8.8
若者や障がい者を含むすべての人が働きがいのある人間らしい仕事に就き、同一労働同一賃金が得られること、強制労働・児童労働・現代奴隷の撲滅、移住労働者その他すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境の促進、多様化・技術向上・イノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成することへの取組み
④ 目標10「各国内及び各国間の不平等を是正する」
ターゲット:10.2、10.3
すべての人々の能力強化および社会的、経済的および政治的な包含を促進すること、差別的な慣行の撤廃、適切な関連法規、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正することへの取組み
⑤ 目標12「持続可能な生産消費形態を確保する」
ターゲット:12.2、12.3、12.4、12.5、12.8
天然資源の持続的管理及び効率的利用、生産・サプライチェーンの食品ロス低減、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出の大幅な削減、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つことへの取組み
⑥ 目標13「気候変動およびその影響を軽減するための緊急対策を講じる」
ターゲット:13.1、13.3
気候関連災害や自然災害に対する強靭性(レジリエント)及び適応の能力の強化や、気候変動の緩和、適応、影響軽減早期警戒に関する教育、啓発、人的能力および制度機能の改善への取組み
⑦ 目標16「持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する」
ターゲット:16.3、16.5
法の支配と司法を通じた紛争の解決の促進や、汚職や贈賄を減少させることへの取組み
⑧ 目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」
ターゲット:17.16、17.17
当センターの組織と中小企業法務の知識と経験をもって、国家機関、地方自治体、企業団体、金融機関、NGO及び市民団体などとのパートナーシップの構築による中小企業支援の推進
(2) ビジネスと人権に関する指導原則(以下「指導原則」)の目的実現のための行動指針
目標・ターゲット 行動内容
① 中小企業による国際的人権の遵守と人権尊重企業方針の宣言
指導原則:11.12.13.15.16.23
すべてのステークホルダーの国際的人権を遵守する義務があることの理解促進と、経営トップが国際人権を尊重する旨の企業方針を宣言すること
② 中小企業における人権デュー・ディリジェンス、負の影響の是正
指導原則:15.17.18.19.21.21.23.24
人権に対して及ぼしている負の影響を発見し、これを軽減し、是正・除去すること、追跡評価すること、適切なCSR条項を作成すること
③ 情報開示・対話
指導原則:指導原則21
人権への対処方法について透明性と説明責任を果たすために、人権方針に関するコミットメントや人権デュー・ディリジェンスについて情報開示し、ステークホルダーと対話すること
④ 苦情処理メカニズムの構築
指導原則:29
ステークホルダーから中小企業に対する苦情の処理を早期に適切になし得るメカニズムを構築すること
(3) ビジネスと人権に関する行動計画(2020-2025)(以下「行動計画」)の目的実現のための行動指針
目標・ターゲット 行動内容
① 第2章「1基本的な考え方」 企業のビジネスと人権に関する理解促進と意識向上、社会全体の人権に関する理解促進と意識向上、サプライチェーンにおける人権尊重を促進する仕組みの整備、救済メカニズムの整備及び改善
② 第2章「2分野別行動計画 (1)横断的事項」 労働(ディーセント・ワークの促進等)、子どもの権利の保護・促進、あたらしい技術の発展に伴う人権、消費者の権利・役割、法の下の平等(障がい者、女性、性的指向、性自認等)、外国人材の受入れ・共生
③ 第2章「2分野別行動計画 (3)人権を尊重する企業の責任を促すための取組」 ビジネスと人権のポータルサイトによる中小企業への情報提供、中小企業を対象としたセミナーの実施、取引条件・取引慣行改善に係わる施策
④ 第2章「2分野別行動計画 (4)救済へのアクセスに関する取組」 人権相談の継続、個別法令等に基づく対応の継続・強化(労働者、障碍者、外国人技能実習生を含む外国人労働者、通報者保護)、裁判外紛争手続の利用促進