経営お役立ちコラム

2022.06.29 【SDGs】

なぜ、ビジネスと人権に関する取り組みが重要視されるべきなのでしょうか?

弁護士 髙木 健至

Q
なぜ、ビジネスと人権に関する取り組みが重要視されるべきなのでしょうか?
A
海外取引のみならず、国内取引にとどまる企業でも、ビジネスと人権への取り組みによって、人権侵害問題による非難や訴訟リスクの防止、売上向上、求人強化などの効果が期待されます。

(解説)

米国(一部)や英国、仏国等の欧米において、人権擁護を企業に求める法令が制定され、これらの地域にある企業と取引を行う際には、ビジネスと人権に関する取り組みが求められます。また、これから海外展開を予定している企業や海外取引を行っている企業のサプライチェーンに属する国内企業にとっては、これらの法令を遵守する必要があり、ビジネスと人権への理解及び実践は必須となります。

このように、ビジネスと人権は海外取引をするにあたって必須と考えられがちですが、国内取引にとどまる企業においても、その取り組みは重要です。

すなわち、国内においても、ビジネスと人権に関する社会的な関心の高まりを背景に、人権に関する取り組みが企業活動に与える影響は大きくなってきています。既に、社内におけるハラスメントや技能実習生への人権侵害問題等により、企業が非難を浴びたり、損害賠償を求められたりするなど、不利益を被った例も発生しており、ビジネスと人権に関する取り組みの必要性は明らかです。

現在、日本政府は、「『ビジネスと人権』に関する行動計画」を策定・公表しており、日本企業に対し、国際的人権を尊重し、指導原則の国際的なスタンダードを踏まえ、人権DDの導入、サプライチェーン上を含むステークホルダーとの対話、効果的な苦情処理の仕組みによる問題解決への期待を表明しています。また、欧米のように国内においても人権DDを義務付ける法令の制定に関する議論がはじまっており、国内においても欧米のような人権擁護を企業に求める法令が制定される可能性もあります。

加えて、ビジネスと人権への取り組みへの評価が、一般消費者にとっての商品選択の理由となり得ることから、他社との差別化を図る要素となります。また、求職者にとっても就職先選択の理由となり得ることも考えられます。

このように、大企業のみならず、中小企業・小規模企業等全ての企業において、ビジネスと人権に関する取り組みの重要性を理解し、実践していくことが重要となります。ビジネスと人権への理解及び実践については、当該分野に精通した弁護士に相談しながら進めていくことが近道と考えます。

以上の記事に関するご不明点、SDGsやビジネスと人権に関するご相談は、中小企業・個人事業主の法的支援を扱う「東京弁護士会中小企業法律支援センター」の相談窓口まで、お気軽にお問い合わせください。

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