経営お役立ちコラム

2023.02.22 【労務】

同一労働・同一賃金に関する
Q&A集
特別休暇について、正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間で差異を設ける場合、どのような点に注意すればよいですか。

弁護士 古賀 聡

Q
特別休暇について、正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間で差異を設ける場合、どのような点に注意すればよいですか。
A
特別休暇の性質や支給する目的に即し、職務内容、職務内容・配置の変更範囲その他の事情を考慮した上で、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇の相違を禁止したパート有期法8条に違反しないように注意する必要があります。 裁判例では、特別休暇(夏期冬期休暇)の趣旨(有給休暇等とは別に休暇を与えて心身の回復を図る)、同趣旨が非正規雇用労働者にも妥当するのかどうか等の事情に着目した判断がされています。詳細は、後記3をご参照ください。

(解説)

  1. パート有期法8条では、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇の相違を禁止するという、いわゆる均衡待遇のルールを定めています。具体的には、両者の職務内容、職務内容・配置の変更範囲その他の事情のうち、特別休暇等個々の労働条件の性質や支給する目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならないと定められています。
  2. 特別休暇とは、一般的に、年次有給休暇等の法定休暇とは別に使用者が独自に定める休暇を指します。 厚生労働省が2018年12月28日に作成した同一労働同一賃金ガイドラインにおいては、法定外の有給の休暇その他の法定外の休暇(慶弔休暇を除く。)であって、勤続期間に応じて取得を認めているものについて、正規雇用労働者と同一の勤続期間である短時間・有期雇用労働者には、正規雇用労働者と同一の法定外の有給の休暇その他の法定外の休暇(慶弔休暇を除く。)を付与しなければならないと定めています。
  3. 正規雇用労働者と非正規雇用労働者の特別休暇(夏期冬期休暇)の相違が不合理であるかが争われた裁判例については、法改正前の労契法20条に関するものであるものの、いくつか存在し、新法であるパート有期法8条の解釈・適用の際にも参考になると考えられます。 例えば、日本郵便(佐賀)事件の最高裁判決(最判令和2年10年15日判時2494号70頁)では、郵便の業務を担当する正規雇用労働者(正社員)に対して1日から3日の夏期冬期休暇を付与する一方で、郵便の業務を担当する非正規雇用労働者(時給制契約社員)に対して同休暇を付与しないという労働条件の相違があった事案について、
    • 夏期冬期休暇の趣旨を、年次有給休暇や病気休暇等とは別に、労働から離れる機会を与えることにより、心身の回復を図るという目的によるものであると認定した上で、
    • 郵便の業務を担当する時給制契約社員は、繁忙期に限定された短期間の勤務ではなく、業務の繁閑に関わらない勤務が見込まれているのであって、夏期冬期休暇を与える趣旨は、上記時給制契約社員にも妥当する
    と指摘し、両者の職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があること等を考慮しても、夏期冬期休暇の有無に関する相違は不合理であると評価することができると判断しました。もっとも、裁判例はあくまで事例判断であり、事実関係を異にする事案では異なる判断が出る可能性があることに注意が必要です。
  4. 同一労働同一賃金への対応が未了であり、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で皆勤・精勤手当等の待遇に差異を設けている場合には、厚生労働省作成の取組手順書等を参考に、同一労働同一賃金に違反しないような賃金制度の構築・運用となっているか確認しなければなりません。同一労働同一賃金に違反しないような賃金制度の構築・運用にあたっては、こちらの記事も参考にしてください。

以上の記事に関するご不明点、同一労働同一賃金を含む働き方改革への対応その他労務問題に関するご相談は、中小企業・個人事業主の法的支援を扱う「東京弁護士会中小企業法律支援センター」の相談窓口まで、お気軽にお問い合わせください。

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