経営お役立ちコラム

2024.03.22 【労務】

勤務態度の悪い従業員を解雇したい!

弁護士 髙橋 幸宏

Q.
当社は、期間の定めなくAを雇用していますが、Aは、遅刻や欠席が多いだけでなく、頻繁に居眠りをしています。そのため、Aを解雇して新しい従業員を採用したいのですが、どのような場合に従業員を解雇できるのでしょうか。
A.
従業員を解雇するためには、解雇の要件、特に、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当な解雇であること、という要件を満たしている必要があります。
解雇が無効であると判断された場合には、原則として解雇期間中の賃金を支払わなければならないため、誤りの無いよう慎重に手続を進める必要があります。

解説

  1. 解雇には、懲戒解雇、整理解雇、普通解雇の3種類があります。
    懲戒解雇とは、懲戒処分(労働者に対するペナルティ)として行われる解雇をいいます。
    整理解雇とは、経営不振など、使用者側の都合で人員整理が必要になる場合に行われる解雇をいいます。
    普通解雇とは、懲戒解雇、整理解雇を除く解雇といいます。具体例を挙げると、勤怠不良や能力不足、協調性欠如による解雇等があります。
    本稿では普通解雇に絞って解説します。
  2. また、そもそも会社が主張するみなし残業代の支給が割増賃金の支払として認められるか、みなし残業代規定の有効性自体が問題とされることもあります。仮に、割増賃金として認められなかった場合、みなし残業代の支払は通常の労働時間相当分の支払となり、残業代を支払わなかったことになります。加えて、会社がみなし残業代として支払ったと主張する部分の金額が、支払うべき割増賃金を計算するときの算定の基礎、すなわち通常の労働時間相当分の賃金に組み込まれて計算されることになり、支払うべき残業代が多額になる可能性があります。
  3. 解雇が無効と判断された場合、法律上は雇用契約が継続していることとなります。そのため、使用者は、原則として解雇期間中の賃金を支払わなければなりません。
  4. 質問の事例でも、勤務態度が悪い(適格性の欠如)等の客観的に合理的な解雇理由が存在するかという観点だけでなく、その内容や程度、改善の機会を与えたか、解雇を回避するための措置を講じたか、他の労働者との対応の比較等、一切の事情を踏まえて、社会通念上相当な解雇であるかを判断しなければなりません。
    仮に解雇の要件が備わっていない場合や、十分な証拠が揃っていない場合には、労働者と話し合って任意の退職を促す等の他の手段を検討する必要もあるでしょう。
    解雇の要件は一律に判断することが困難であるうえに、解雇が無効と判断された場合の使用者の不利益が大きいため、弁護士に相談して慎重に手続を進めることをお勧めします。

以上の記事に関するご不明点その他労務問題に関するご相談は、中小企業・個人事業主の法的支援を扱う「東京弁護士会中小企業法律支援センター」の相談窓口まで、お気軽にお問い合わせください。

また,整理解雇を中心とした人員整理に関する注意点については,こちらの動画コラムのNO.4でも解説をしておりますので,こちらも一緒にご覧ください。

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