経営お役立ちコラム

2020.12.10 【契約】

中小事業者等への「しわ寄せ」問題等に関する
Q&A集
新規に取引を開始する/契約する場合に調査すべき事項
(取引相手が個人である場合)

弁護士 高橋 幸宏

Q
新たな取引相手と契約を締結する場合、契約締結前にどのようなことを調査すべきでしょうか(取引相手が個人である場合)。
A
取引相手の本人確認や取引権限の確認、支払能力の調査等を行う必要があります。

※取引相手が法人である場合については、こちらの記事をご参照ください。
http://cs-lawyer.tokyo/column/2020/08/01.html
  1. 調査の必要性
    取引相手が他人の氏名を騙っていた場合、その他人からは報酬の支払を受けることができません。また、取引相手に支払能力がない場合、たとえ裁判で勝訴判決を得たとしても、報酬の支払を受けることは困難です。これではせっかくの業務が徒労に終わってしまうため、あらかじめ取引相手の本人確認や支払能力調査等を行う必要があるのです。
  2. 取引相手の本人確認等
    1. (1) 取引相手の本人確認
      取引相手が他人の氏名を騙っている場合、その他人に契約上の義務の履行を求めることはできないため、取引相手の本人確認を行う必要があります。特に、近年では、他人の名前を騙った大規模な不動産取引詐欺も発生しており、本人確認の重要性が増していると言えます。
      本人確認を行う際には、顔写真付き本人確認書類(運転免許証等)の提示を求めるのがよいでしょう。
    2. (2) 取引相手が代理人を名乗る場合
      代理人と称する人物が実際には代理権を有していない場合、原則としてその法律効果が本人(代理人を使用する者)に及びません。そのため、代理人と称する人物が実際に代理権を有しているか、あらかじめ調査する必要があります。
      調査の方法としては、本人の署名捺印のある委任状と印鑑証明書を提出させる方法が考えられます。また、代理人と称する人物に責任追及する可能性もあるため、代理人と称する人物の本人確認を併せて行うとよいでしょう。
  3. 取引相手の支払能力調査
    取引相手が資産を持たない場合には、事実上報酬を請求することができないため、あらかじめ取引相手の有する資産(不動産、預貯金、有価証券等)を調査する必要があります。また、継続的な取引が予定されている場合には、取引相手の経営状態も調査することが望ましいでしょう。
    まず、不動産の調査方法として、取引相手の自宅や営業所の不動産登記簿謄本を取得し、自宅や営業所が本人名義であるか、差押えがされていないか、担保が設定されているか等を確認することが考えられます(不動産登記簿謄本は、土地または建物の地番が分かれば誰でも申請することができ、法務局窓口での申請、郵送申請だけでなく、オンライン申請も可能です)。他方で、預貯金、有価証券については、取引相手の協力なしに調査することは困難であるため、取引相手から聞き取りを行う必要があります。調査の結果、取引相手にめぼしい資産がないことが判明した場合には、連帯保証人を付けるなどして、支払能力の不足を補完することも検討してください。
    経営状態については、取引相手の確定申告書を確認することが考えられますが、あまり現実的ではありません。紹介者がいる場合には、紹介者から取引相手の経営実態の聞き取りを行うとよいでしょう。
    取引相手が個人である場合、法人に比べて、資産、経営実態の調査が容易ではありません。そのため、取引相手から聞き取りを行い、支払能力を担保する資産を有しているか、支払期間や支払方法など条件が適切であるか、業務内容に違法性がないか、取引の目的に不審な点がないか等、十分な確認を行ってから取引に臨むようにしてください。
東京弁護士会 中小企業法律支援センター
https://www.toben.or.jp/form/chusho1.html