経営お役立ちコラム

2021.02.26 【新型コロナウイルス関連】

新型コロナウイルス対策に関するQ&A(第三者承継(M&A))

Q1
長年オーナー社長として会社を経営してきましたが、高齢によりそろそろ引退したいと考えております。しかし、めぼしい後継者がおらず、他方で社員や取引先のことを思うと、事業をやめてしまうわけにもいきません。事業を他者(他社)に譲る、第三者承継(M&A)という方法があるとよく聞くのですが、どのようなメリットがあるのかを教えてください。
A
会社の外に承継先を探す第三者承継(M&A)は、候補者を広く外部に求めることができますので、最適な後継者を見つけられる可能性があります。また、従業員の雇用や取引先との関係をそのまま維持することが期待できますし、引き継ぎ先の事業と一体になることでの相乗効果も望めます。さらに、現オーナー社長にとっては、事業引き継ぎの対価を得られるため、それを個人の負債の精算や、引き継ぎ後の生活の原資に充てることが可能となります。事業引き継ぎの際には、個人保証や担保提供から解放されることも期待できます。
Q2
長年オーナー社長として会社を経営してきましたが、既に高齢となり、社内に後継者もいないため、事業を続けるために事業を他社に譲る第三者承継(M&A)を考えています。人生初めての出来事であり、不安が大きく、どのような点を留意すべきか教えてください。
A
候補者を広く外部に求めることができる一方、最適な後継者を見つけるのに一定の時間を要することがあります。また、譲渡価格その他契約条件は多岐に及び高度な法的判断も必要で、かつ合意までに時間がかかります。そのため、早期に弁護士等の専門家に相談して動き出すのが得策でしょう。他方で、買い手の承継判断のために、会社の資産状況その他の機密情報を開示することになりますので、交渉相手は慎重に選ぶ必要があります。さらに、第三者承継を模索中であることが知られると信用不安や従業員の動揺を生じさせる結果に繋がりかねませんので、社外はもちろん、社内の従業員や親族に対しても、情報管理を徹底し、不用意な漏洩を回避する必要があります。その他、留意すべき点はたくさんありますので、弁護士等の専門家や支援機関の助けを借りるべきでしょう。
Q3
後継者がおらず、自分が経営する会社を他の会社に引き取ってもらいたいと考えていますが、どうやって相手を探せばよいのでしょうか。
A
第一に、付き合いのある取引先や同業他社のなかから自力で見つける方法があります。第二に、国が運営する公的相談窓口である「事業引継ぎ支援センター」を利用する方法があります。全47都道府県に設置されている同センターでは、予め名簿に登録された買い手候補者との引き合わせや、M&A仲介業者の紹介、一般相談に無料で対応してもらえます。第三に、民間のM&A仲介業者やアドバイザーを利用する方法です。各業者が保有する候補者名簿の紹介や、候補者の探索、助言等のサービスを受けることができます。取り扱う案件規模や業種、報酬額や支払条件、業務範囲はそれぞれですので、業者の選定及び契約内容をよく吟味する必要があります。
Q4
自分の経営する会社には後継者がいないため、第三者承継(M&A)を検討していますが、どのような流れで進んでいくのかがイメージしにくいため、教えてもらえますか。
A
まずは何より、会社・事業の現状を把握し、事業価値がどの程度あるかを客観的に評価することが大切です。次に、買い手候補の探索及び選定作業に移り、候補が決まったら「秘密保持契約」を締結します。買い手候補に対して、会社の資産状況その他の機密情報を開示することになるためです。秘密保持契約締結後、会社の情報を開示したうえで、承継の基本条件について交渉し、「基本合意書」を締結します。その後、買い手候補が会社の財務・法務・税務・ビジネス面等について「デュー・デリジェンス(DD)」を実施し、その結果を踏まえて「最終契約(株式譲渡契約、事業譲渡契約等)」の条件について交渉し、締結後、同契約に記載された実行日に対価支払いや必要書類の受け渡し等を行います(「クロージング」)。
Q5
私が経営する会社は堅実に業績を上げてきており、私が持っている株式も相当な価値があるのではないかと見ています。株式を他に譲渡して事業を承継してもらうにあたって、どのような点に注意すべきですか。
A
株式譲渡の場合、買い手に対して会社の全株式を譲渡することがほとんどです。そのため、現状、株式が複数の株主に分散している場合には、それを集約しておくことが大事です。次に、株式の価値を適切に把握することが極めて重要ですが、価値の算定手法も複数存在するため、適切な方法について支援機関や専門家の助言を求めるのが望ましいでしょう。時価純資産又は簿価純資産にとどまらず、のれん代(年間利益に一定年数分を乗じたもの)を加味する場合もあります(中小企業庁令和2年3月「中小M&Aガイドライン-第三者への円滑な事業引継ぎに向けて-」参照)。また、株式を譲渡した株主個人には株式譲渡によって得た収益には譲渡所得税がかかる点にも注意が必要です。
Q6
長年、会社ではなく個人事業主として事業を営んで参りました。そろそろ引退を考えているのですが、個人事業主の場合には第三者に事業引継ぎすることは難しいでしょうか。どのような留意点があるでしょうか。
A
もちろん、会社ではなく個人事業の形態であっても、第三者への事業引継ぎは可能ですし、積極的に検討すべきです。個人事業の場合は、基本的に「事業譲渡」を行うことになりますが、メリット(Q1)、留意点(Q2)、引継ぎ先を探す方法(Q3)、流れ(Q4)、事業価値の算定(Q5)については、これまでの回答が同じく概ね当てはまると考えてよいでしょう。なお、事業引継ぎ支援センターでは、後継者不在の個人事業主(又は小規模事業者)と、事業を営んでいないが経営意欲のある創業希望者のマッチング支援(「後継者人材バンク」)も行っています。
Q7
私の経営している会社は金融機関からの借入金が大きく、現状では完済するには50年以上はかかってしまいます。当社のような債務超過の会社でも債務免除を受けて第三者承継(M&A)はできるのでしょうか。できるとした場合、どのような点に留意すべきでしょうか。
A
債務免除の手法としては、私的整理手続と法的整理手続があり、まずは事業価値の毀損の少ない私的整理手続によることを検討します。その場合、第二会社方式といって、別会社(第二会社)に事業を承継させ、旧会社は金融機関の債務の一部を弁済し、残債務の免除を受けて清算する方法が多く行われています。弁済の方法は、①第二会社が元の会社に譲渡対価を一括で支払い、元の会社はこの対価から金融機関の債務の一部弁済をする(一括弁済)、②第二会社が元の会社の金融機関の債務の一部を債務引受して分割で弁済する(分割返済)、の二つが考えられます。金融機関は①を望みますので、②はハードルが高いです。
私的整理手続を成功させるためには、全ての金融機関の同意を得ることが必要です。同意を得る手続として、金融機関と協議をした上で、中小企業再生支援協議会や特定調停などの第三者機関による調整も行われます。
資金ショートが迫っている等のやむを得ない事情のもとでは、金融機関全ての同意を得る必要のない法的手続を選択することもあります。例として新会社に事業譲渡をして元の会社を破産させるという方法があります。事業譲渡を破産の前後いずれの時期に行うかは弁護士と十分に相談すべきです。破産の前に事業譲渡を実施する場合、事業や資産の価値を適切に算定して対価を支払わなければ、破産管財人に否認されるリスクがあることに注意が必要です。
いずれにせよ、金融機関の債務免除を受けるにあたっては、事業再生に通じた弁護士に相談することをお勧めします。
Q8
私は会社のオーナー社長ですが、金融機関に多額の連帯保証をしています。会社を第三者承継した場合、連帯保証債務はどうなるのでしょうか。
A
事業を承継した先が会社の金融機関の債務も承継するのであれば、連帯保証債務についても承継先の社長等に引き継いでもらい、自らは離脱することを承継の条件とすべきでしょう。その場合、金融機関の承諾を得る必要があります。
事業を承継した先が会社の金融機関の債務を承継できない場合には、債務免除を求めざるを得ません(Q7を参照してください)。この場合には、「経営者保証に関するガイドライン」を利用して保証債務の免除を受ける途があります。詳しくは、「◆ 事業の廃業・清算」のQ6を参照してください。