経営お役立ちコラム

2020.04.08 【新型コロナウィルス関連】

新型コロナウイルス対策に関するQ&A
(労働関係その3、4:安全衛生、労災補償)

【2022.8.8現在】

労働関係等については、個別の事情によって結論が変わってきますし、事案によっては微妙な判断が求められたり、最終的には経営判断をせざるを得ない部分もあるので、お悩みの場合は弁護士にご相談することをお勧めします。
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3 安全衛生

<就業禁止の措置>
Q1 感染者について労働安全衛生法第68条に基づく病者の就業禁止の措置を講ずる必要はありますか。また、感染可能性のある労働者の就業禁止命令は可能でしょうか。
A:
<病者の就業禁止の措置>
令和3年2月3日付けで、感染症法及び検疫法が改正され(同年2月13日施行)、新型コロナウイルス感染症は「指定感染症」から「新型インフルエンザ等感染症」に変更されましたが、従来と同様に労働者が新型コロナウイルスに感染していることが確認された場合は、感染症法に基づき、都道府県知事が該当する労働者に対して就業制限や入院の勧告等を行うことができることとなっています。
感染症法に基づき都道府県知事より入院の勧告を受けた労働者について、使用者は、入院により就業できないことを理解するとともに、都道府県知事により就業制限がかけられた労働者については、会社に就業させないようにする必要があります。
なお、感染症法により就業制限を行う場合は、感染症法に基づくことになるので、労働安全衛生法第68条に基づく病者の就業禁止の措置の対象とはなりません。

<感染可能性のある労働者の就業禁止命令>
感染可能性のある労働者について、就業規則の定めに基づき就業禁止命令を出すことは可能です。
この場合、当該労働者は、依然として新型コロナウイルスに罹患しているか否かが不明である状況であることから、上記に述べた法に基づく就業制限の対象にはなりません。
しかし、使用者は、職場環境と労働者に関して安全配慮義務を負っており、かつ、職場の秩序維持権限を有するため、感染可能性のある労働者については、就業規則の定めに基づいて、出勤停止命令を出すことができます。
なお、この場合、賃金及び休業手当の支払の要否については、上記「1 労働者を休ませる場合の措置(休業手当、特別休暇など)」各Q&Aに沿って対応することが求められます。
<健康診断の実施>
Q2 新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、労働安全衛生法に基づく健康診断の実施を延期するといった対応は可能でしょうか。
A: 事業者は労働安全衛生法の規定に基づき、労働者の雇入れの直前又は直後に健康診断を実施することや、1年以内ごとに1回定期に一般健康診断を行うことが義務付けられています。しかしながら、感染拡大により、緊急事態宣言が発出された場合は、①集団で実施するものについては、緊急事態宣言の期間において、原則として実施を延期する。②個別で実施するものについては、その実施時期や実施方法、実施の必要性や緊急性等を踏まえ、関係者や実施機関等と適宜相談の上で実施するかどうか判断することとされています。
なお、延期等により、特定健康診査等を受診できない者には、別に特定健康診査等を受ける機会を設ける必要があります。
(参考)「新型コロナウイルス感染症に係る緊急事態宣言の解除を踏まえた各種健診等に おける対応について」(https://jhep.jp/jhep/sisetu/pdf/coronavirus_24.pdf
<安全委員会等の開催>
Q3 新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、労働者が集まる会議等を中止していますが、労働安全衛生法に基づく安全委員会等の開催については、どのように対応すればよいでしょうか。
A: 安全委員会等については、法令に基づき毎月1回以上開催する必要がありますので、いわゆる"三つの密"を避け、十分な感染防止対策を講じた上で開催してください。安全委員会等を開催するに際しては、事業場における新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた対応等についても議題に含めるなど、積極的な調査審議に努めることが望ましいとされています。

4 労災補償

Q1 労働者が新型コロナウイルス感染症を発症した場合、労災保険給付の対象となりますか。
A: 業務又は通勤に起因して発症したものであると認められる場合には、労災保険給付の対象となります。詳しくは、事業場を管轄する労働基準監督署にご相談ください。
Q2 医師、看護師などの医療従事者や介護従事者が、新型コロナウイルスに感染した場合、労災保険給付の対象となりますか。
A: 患者の診療もしくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となります。
Q3 医療従事者や介護従事者以外の労働者が、新型コロナウイルスに感染した場合、労災保険給付の対象となりますか。
A: 新型コロナウイルス感染症についても、他の疾病と同様、個別の事案ごとに業務の実情を調査の上、業務との関連性(業務起因性)が認められる場合には、労災保険給付の対象となります。
感染経路が判明し、感染が業務によるものである場合については、労災保険給付の対象となります。
感染経路が判明しない場合であっても、労働基準監督署において、個別の事案ごとに調査し、労災保険給付の対象となるか否かを判断することとなります。
Q4 感染経路が判明しない場合、労災保険給付の対象となるか否かどのように判断されますか。
A: 感染経路が判明しない場合であっても、感染リスクが高いと考えられる業務(下記(1)複数の感染者が確認された労働環境下での業務や(2)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務)に従事していた場合には、潜伏期間内の業務従事状況や一般生活状況を調査し、個別に業務との関連性(業務起因性)について判断されます。
  1. (1)複数の感染者が確認された労働環境下での業務
    「複数の感染者が確認された労働環境下での業務」とは、労災の請求人を含め、2人以上の感染が確認された場合をいい、請求人以外の他の労働者が感染している場合のほか、例えば、施設利用者が感染している場合等を想定しています。
    なお、同一事業場内で、複数の労働者の感染があっても、お互いに近接や接触の機会がなく、業務での関係もないような場合は、これに当たらないと考えられます。
  2. (2)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務
    「顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務」とは、小売業の販売業務、バス・タクシー等の運送業務、育児サービス業務等を想定しています。
Q5 上記Q4のA:(1)、(2)で示された業務以外の業務は、対象とならないのですか。
A: これらの業務以外の業務であっても、感染リスクが高いと考えられる労働環境下の業務に従事していた場合には、潜伏期間内の業務従事状況や一般生活状況を調査し、個別に業務との関連性(業務起因性)について判断され、労災認定の対象となり得ます。
Q6 労働者が新型コロナウイルスに感染したとして労災請求する場合、事業主として協力する必要はありますか。
A: 労災請求手続は、請求人が行うものですが、事故のため、請求人がみずから保険給付の請求その他の手続を行うことが困難である場合には、請求人の症状を確認しつつ、適宜、請求書の作成等への助力をしなければなりません(労働者災害補償保険法施行規則第23条)。
(参照)労働者災害補償保険法施行規則第23条(抄)
1 保険給付を受けるべき者が、事故のため、みずから保険給付の請求その他の手続を行うことが困難である場合には、事業主は、その手続を行うことができるように助力しなければならない。
(略)
Q7 海外出張労働者や海外派遣特別加入者が、新型コロナウイルスに感染した場合、労災保険給付の対象かどのように判断されますか
A:国外の場合
  1. (1)海外出張労働者
    海外出張労働者については、出張先国が多数の新型コロナウイルス感染症の発生国であるとして、明らかに高い感染リスクを有すると客観的に認められる場合には、出張業務に内在する危険が具現化したものか否かを、個々の事案に即して判断します。
  2. (2)海外派遣特別加入者
    海外派遣特別加入者については、他のQAで解説しています国内労働者に準じて判断されます。
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