経営お役立ちコラム
2019.07.22 【労務】
私が経営する会社の女性従業員が、男性従業員からのセクハラを受けたと言っています。
- 中小企業向けアプリ「ポケ弁」にて配信した執筆時点のものであり、記事内容およびリンクについてはその後の法改正などは反映しておりません。
- 執筆者個人の責任で発表するものであり、東京弁護士会としての見解を示すものではありません。
- 個別事例に関する法的なアドバイスを行うものではありません。具体的なご相談は、東京弁護士会中小企業法律センターにお問い合わせください。
近時、セクハラ(セクシャル・ハラスメント)だけでなく、パワハラ(パワー・ハラスメント)、アルハラ(アルコール・ハラスメント)など、さまざまなハラスメント(嫌がらせ)が社会問題になってきています。
会社(事業主)は、それらのハラスメントが発覚した場合、対策を講じるべき責任を負っています。「従業員間における問題だから、関係ない」などと考えて放置することがないよう注意が必要です。
セクハラ対策は会社の義務です
会社(事業主)は、従業員との労働契約に付随する義務として、良好な職場環境の維持確保に配慮すべき義務(職場環境配慮義務)を負っていると解されています。 また、男女雇用機会均等法(以下「均等法」といいます)では、事業主が雇用管理上講ずべき措置として、次のことが定められています。
- 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
- 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 職場におけるセクシュアル・ハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
- 1から3までの措置と併せて講ずべき措置
均等法による措置義務については、以下のホームページが参考になります。
セクハラが発覚したときの対応
均等法におけるセクハラが発覚した場合の対応ポイントは、次の通りです。
- 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
- 事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと。
- 事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと。
- 再発防止に向けた措置を講ずること(事実が確認できなかった場合も同様)。
- 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。
- 相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
迅速な対応を怠り被害が深刻化してしまったり、プライバシーへの配慮を怠り二次被害が発生してしまったりすることのないよう適切な対応に留意することが必要です。
平素からのセクハラ対策が必要
社内でセクハラが発生した場合、会社は、職場環境配慮義務違反、あるいは使用者責任という理由で、被害者に対する損害賠償責任を負う可能性があります。
また、均等法上の義務を果たしていない場合には、企業名を公表されたり、過料の制裁を受けてしまうこともあります。
そのうえ、セクハラが発生するような悪い環境では、従業員としても、働くモチベーションがあがらず、仕事の効率も低下してしまうでしょう。
セクハラ対策は会社・事業主の法的義務となっていますが、それだけではなく、従業員の労働意欲の向上、仕事効率の向上、企業イメージの悪化を防ぐという観点からも、平素より対策を講じておく必要があると言えます。
厚生労働省 「セクシュアルハラスメント対策に取り組む事業主の方へ」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000088194.html