経営お役立ちコラム

2019.09.09 【契約】

知らなかったでは済まない下請法とその概要
(その1)

弁護士 田中 康一

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執筆日:2016/7/18

正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」といいます。取引通念上、発注者は受注者より優越的地位にあり発注者の規模が大きいほどその傾向が強くなります。そのため、発注者(親事業者)の一方的な都合により下請代金が発注後に減額されたり、支払いを遅延されたりすることを防止し、受注者(下請事業者)の利益保護を目的として制定されました。

「下請け」のポイント

下請けというと、一般に、発注者から注文を受けた元請会社がおり、元請会社がその受注業務の一部又は全部を別会社に再発注する場合をいうといったイメージを持つかもしれません。しかし、同法律は事業規模の大きい会社が小さい会社へ業務委託をする場合に広く適用される法律であり、自社が発注者となる委託取引にも適用される場合があります。そのため、無意識のうちに下請法違反を犯している危険がありますが、違反した場合、知らなかったでは済まされず、経済的損失のみならず社会的信用の失墜を招くおそれがあります。

下請法の適用範囲について①

Q.対象となる委託取引はどのようなものがありますか。
A.製造委託(2条1項)、修理委託(2条2項)、情報成果物作成委託(2条3項)、役務提供委託の4つが規定されています。なお、建設工事そのものについては下請法の適用は無く、建設業法に同趣旨の規定があります。

下請法の適用範囲について②

Q.どのような基準で「親事業者」「下請事業者」となりますか。
A.委託取引の内容と資本金(又は出資金の総額)区分により決められます。

製造委託・修理委託、情報成果物作成委託のうちプログラム作成及び役務提供委託のうち運送・物品の倉庫保管・情報処理については、資本金3億円超の会社が資本金3億円以下の会社に発注する場合、資本金1千万円超の会社が資本金1千万円以下の会社に発注する場合、それぞれが「親事業者」「下請事業者」となります。

また、情報成果物作成委託(プログラム作成を除く)及び役務提供委託(運送・物品の倉庫保管・情報処理を除く)については、資本金5千万円超の会社が資本金5千万円以下の会社に発注する場合、資本金1千万円超の会社が資本金1千万円以下の会社に発注する場合、それぞれが「親事業者」「下請事業者」となります。

中小企業庁「下請代金遅延等防止法」
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/daikin.htm

公正取引委員会「下請法」
http://www.jftc.go.jp/shitauke/