経営お役立ちコラム
2019.09.23 【不動産】
建物の賃借人が賃料を数か月分も滞納しております。
どうすればよいでしょうか。
- 中小企業向けアプリ「ポケ弁」にて配信した執筆時点のものであり、記事内容およびリンクについてはその後の法改正などは反映しておりません。
- 執筆者個人の責任で発表するものであり、東京弁護士会としての見解を示すものではありません。
- 個別事例に関する法的なアドバイスを行うものではありません。具体的なご相談は、東京弁護士会中小企業法律センターにお問い合わせください。
大きく分けて2つの側面から考える必要があります。1つは、①賃借人や連帯保証人から滞納賃料を回収すること。もう1つは、②滞納賃料額がさらに膨らむことを避けるために、賃貸借契約を解除して契約を終了させ、なるべく早期に賃借人から建物を明渡してもらうことです。
賃借人や連帯保証人が任意に応じてくれない場合には、裁判所に訴訟を提起して、建物明渡しや滞納賃料の支払を命じる判決を取得します。そして、この判決に基づいて強制執行手続をとります。
相手方(賃借人や連帯保証人)の対応いかんにもよりますが、裁判手続(訴訟や強制執行)をとることも見据えて、早めに弁護士にご相談された方がよいと思います。
なお、賃借人が賃料を滞納しているからといって、勝手に建物の鍵を取り替えたり、建物内の物品を処分したりすることは違法行為であり、許されません。
賃貸借契約の解除、建物の明渡し
賃借人が賃料を数か月分も滞納しているような場合、そのまま賃貸借契約を継続しても今後発生する分の賃料の支払を期待できないことが多く、滞納賃料額がさらに膨らむことが懸念されます。そこで、早期に賃貸借契約を解除して、賃貸借契約を終了させることを検討する必要があります。
賃貸借契約を解除して契約が終了となれば、賃借人は建物を使用継続する権利を失いますので、賃借人に対して建物の明渡しを求めます。
賃借人が任意に建物の明渡しに応じてくれない場合には、建物明渡しを求める訴訟を提起して、建物明渡しを命じる判決を取得します。
建物明渡しを命じる判決を受けても賃借人が任意に建物の明渡しに応じてくれない場合には、この判決に基づいて建物明渡しの強制執行手続をとります。
なお、賃借人が賃料を滞納しているからといって、勝手に建物の鍵を取り替えたり、建物内の物品を処分したりすることは違法行為であり、許されません。
滞納賃料の回収
賃借人が賃料を滞納している場合、まずは賃借人に対して賃料を支払うように請求するとともに、連帯保証人がいれば、連帯保証人に対しても請求することが考えられます。
なお、賃借人から差し入れられている敷金や保証金がある場合には、敷金や保証金を滞納賃料に充当することも考えられます。
賃借人や連帯保証人に対して請求をしても任意の支払に応じてくれない場合には、滞納賃料の支払を求める訴訟を提起して、滞納賃料の支払を命じる判決を取得します。
滞納賃料の支払を命じる判決を受けても賃借人や連帯保証人が任意の支払に応じてくれない場合には、この判決に基づいて滞納賃料を回収する強制執行手続をとります。
ただし、滞納賃料のような金銭の支払を命じる判決に基づく強制執行手続の場合、回収可能な相手方の財産を把握していなければ、現実に回収することは容易ではありません。
早めに弁護士にご相談を!!
建物明渡しの実現までに時間を要すれば、その分だけ滞納賃料額がさらに膨らむことにもなりかねません。そのため、現に生じている滞納賃料を回収することも重要ではありますが、それよりも、滞納賃料額がさらに膨らむことにより回収不能な損失が拡大することを避けることの方がより重要な場合もあります。
賃借人や連帯保証人が十分な財産を有しており、最終的には強制執行手続をとることにより滞納賃料等を回収できる見込みが十分であるというような場合でない限り、滞納賃料額がさらに膨らむことにより回収不能な損失が拡大することを避けるために、まずは早期に建物の明渡しの実現を目指すことが重要となります。
相手方(賃借人や連帯保証人)の対応いかんにもよりますが、最終的には裁判手続(訴訟や強制執行)をとることも見据えて、早めに弁護士にご相談された方がよいのではないかと思います。