経営お役立ちコラム
2019.10.15 【会社経営】
オーナー社長が高齢で引退する際に事業をどうやって承継させるか
- 中小企業向けアプリ「ポケ弁」にて配信した執筆時点のものであり、記事内容およびリンクについてはその後の法改正などは反映しておりません。
- 執筆者個人の責任で発表するものであり、東京弁護士会としての見解を示すものではありません。
- 個別事例に関する法的なアドバイスを行うものではありません。具体的なご相談は、東京弁護士会中小企業法律センターにお問い合わせください。
会社の事業を承継させる方法としては、①親族内承継(オーナー経営者の親族(主に子息子女)に承継)、②親族外承継(親族でない従業員や役員、外部から招聘した者に承継)、③M&A(第三者に事業を売却等により承継)に大きく分かれます。これまでは①が代表的でしたが、最近は③のパターンが増えています。
また、会社の経営状況によっても、業績が好調で資産が負債を上回っている場合(資産超過)と、業績が芳しくなく負債が資産を上回っている場合(債務超過)とで、対応方法が異なってきます。
事業承継は会社の運命を左右する重大な事柄であるとともに、予期せぬ事態により急に承継を迫られることもあり、早めに入念な準備をしておくことが肝心です。その際、経営者が独りで悩むよりは、専門家に相談して方向性を検討し、対策を練ることをお薦めします。
資産超過の株式会社でオーナー社長が自らの子息子女に事業を承継させる方法
会社経営をコントロールする権利は株式にあるので、親族や第三者に株式が分散しているのであれば、これをオーナー社長の下に集中させる必要があります。
株式を承継させるためには、①売買、②遺言により相続させる、といった方法があります。まとまった金銭が用意できれば①で相当な対価により承継させるのが望ましいですが、用意できなければ、②の方法を採ることが多いです。
②の方法の場合は、後日の紛争を防止するためにも公正証書遺言を作成した方がよいですし、他の相続人には遺留分(相続人に相続が保障された一定の割合)が認められていることが多いので、そのための対策を講じる必要があります。また、株式の評価によっては高額の相続税を負担する可能性があるので、税理士と相談して節税対策を講じることが望ましいですし、相続税の資金を用意しておく必要があります。
資産超過の株式会社でオーナー社長が親族以外の第三者に事業を承継させる方法
第三者に対して株式を売却する方法が簡便でよく用いられています(「M:&A」と呼ばれる方法の1つです)。
まずは、事業を承継するにふさわしい第三者を選定する必要があります。これは、専門家の手を借りながら幅広い人脈の中で選ぶことが望ましいです。場合によっては入札方式により、譲渡金額等で最も良い条件を提示した先に譲渡する方法もあります。
通常、株式売却を進めるにあたっては、基本合意や守秘義務契約を締結した上で、買い手側がデューデリジェンスという事業価値の調査を事業面・財務面・法務面で実施し、譲渡金額その他の条件について当事者間で協議して合意に至り、最終的な譲渡契約を締結するという流れになります。
株式を好条件で売却するためには、日頃より事業面は勿論のこと、会社資産と個人資産の混同を無くす等ガバナンス面で「磨き上げ」をしておくことが重要です。
債務超過の株式会社で事業を承継させるための注意点
債務超過の会社では負債(特に対金融機関の借入金)が過大となっていることが多く、債権者と協議をした上で、場合によっては債務の一部免除を受ける必要があります。
債務免除のためによく行われている手法としては、新たな経営者が株主となる受け皿会社を設立し、事業譲渡や会社分割といった方法で受け皿会社に事業を承継させて、元々の会社は清算(特別清算など)するというやり方です(第二会社方式と言われます)。その際に重要なことは、承継する事業の事業価値を適正に評価し、その分は債権者への弁済に平等に充てることです。債権者(多くは金融機関)に対して適時適切に情報を開示し、誠実に協議を行うことも大切です。
金融機関との交渉には、交渉の専門家である弁護士を代理人に立てるのが便宜です。