経営お役立ちコラム
2019.12.26 【取引トラブル】
債権回収の基礎の基礎
ーきちんと「証拠」を残していますか?ー
- 中小企業向けアプリ「ポケ弁」にて配信した執筆時点のものであり、記事内容およびリンクについてはその後の法改正などは反映しておりません。
- 執筆者個人の責任で発表するものであり、東京弁護士会としての見解を示すものではありません。
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取引先から売掛金の入金がありません!契約は全て口約束で、契約書も何もありません!この場合、売掛金を請求するにはどうすればよいのでしょうか?
債権回収の基礎の基礎、まず、取引の中できちんと「証拠」を残すことの意味と具体的な残し方を考えましょう。
1 契約書の役割
本来、法律で特に規定されたものを除き、契約は両当事者の意思の合致で成立します。そして、契約通りに履行がなされている間は、何ら契約書の「出番」はありません。
しかし、取引を行う中で、約束通り義務の履行がないこともあれば、契約の合意内容について認識の食違いが生じる場合もあります。
そのような場合に、後日合意の内容や言い分を明らかにしてくれるのが契約書なのです。
2 契約書の作成は慎重に①
したがって、契約書を作成するときは、内容をきちんと確認した後に記名または署名捺印をすることが肝心です。
また、損害が発生した場合どちらがその責任や費用を負担するか、契約が途中でキャンセルになった場合に相手方にどのような責任を取ってもらうのか、いざ問題が発生した場合に揉めそうな点についてはきちんと書面に落とし込んでおくことが肝心です。
その意味では、契約書は相手任せにするのではなく、出来れば自分の方から提案をした方がよいと思います(人間の心理として、既に出来上がった契約書案を前に、あれもこれもと修正を求めることはなかなか難しいものです)。
3 契約書の作成は慎重に②
また、契約書の文言で意味がよくわからない、何を指しているのかが曖昧だということを経験したことはありませんか?このような場合にも、文言の意味をわからないままにするのではなく、きちんと意味内容を確認し、それを例えば覚書という形で整理しておくことが重要です。
間違っても、内容をよく見ずに相手方が作成した契約書にハンコを押すことは避けてください!
4 契約書がない!としても慌てずに
では、ご質問のように、取引に先立って契約書を作成していなかった場合には、もはや打つ手はないのでしょうか。
先ほども申し上げたように、契約書は契約に関してどのような合意を行なったかの証拠となるものです。したがって、何らかの方法で合意の内容が明らかになったものがあれば、それを証拠として裁判所に説明をすることができます。
具体的には覚書であるとか、交渉に関する議事録、メールやFAXのやり取り、もしくは会話の録音等であっても合意に関する証拠とすることができます。
そのため、まずは何か合意内容を裏付ける証拠がないかどうかを探していただくことをお勧め致します。
「まさか(~はないだろう)」と考えるのではなく、「もしも(~になったらどうするか)」と、備えることが重要なのです。