経営お役立ちコラム

2020.01.16 【倒産】

製造業の破産事例

弁護士 金川 征司

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執筆日:2016/7/19

法人や個人事業者が、金融機関からの借入金や取引先への支払いができなくなった場合、債務をなくす方法として破産手続があります。

この点、借金を減額して事業を継続する民事再生手続などもありますが、事業継続の見込みがない場合には破産手続を取らざるを得ない場合が多いです。

東京では、東京地方裁判所民事20部が破産手続等の専門部として設置されており、法人や個人事業者の破産申立てがされると、同部から選任された破産管財人が会社の業務の引き継ぎや会社の清算を行います。

破産管財人は、裁判所の管財人名簿に登録されている弁護士から選任され、破産者の財産を換価して債権者への配当原資を集めたり財産を処分したりします。

今回は、破産申立ての事例を1つ紹介させていただきます。

法人の概要など

当該法人の代表者は、ご紹介でいらっしゃいました。当該法人は、設立から約60年を経過した製造業で、売上は年間約3億円、負債は金融機関や仕入れ先などに対する債務含め約6億円で、従業員はパートの方を含め、常時30名程度いる会社でした。

当該法人は、これまで取引先からの受注を受けて、部品等の製造を行ってきましたが、発注先からの値下げ交渉に応じざるを得なくなり、利益が減少し続け、相談に来られた時点では、翌週の手形決済ができず、二度目の不渡りを出すことが確実になっている状況でした。

当該法人は、売上は立っており年間収支では黒字であったため、もっと早い段階で相談を受けていれば、民事再生など借金を減額して事業を継続できる可能性もありましたが、この時点では、もはや破産手続をとるよりほかなく、また不渡りが出ることにより取引先からの取り付け騒ぎが起こる可能性があったため、早々に破産申立てを行うこととなりました。

破産申立てから終結まで

受任をした後、急いで必要資料を集め、破産申立てと同日に破産開始決定を出してもらい、破産管財人も選任してもらいました。

破産管財人には、封印執行という債権者が破産者の財産を勝手に持って行ったりできないような手続も検討してもらっていましたが、幸い取り付け騒ぎには至りませんでした。

代表者の方もまた、法人借入について連帯保証をし、ご自宅等の不動産に抵当権を設定しておりましたので、法人の破産申立てを行った翌週に代表者個人の方についても破産申立を行い、法人と同じ管財人が選任されました。

その後、管財人には、売掛金の回収、法人、個人の不動産の処分等の業務を行ってもらい、債権者集会が開かれました。

管財人の集めた財産を債権者に配当し、事件は終わりましたが、配当率は15%と破産手続の中では割と高い配当ができたと思っております。

また代表者の方も、債務から解放され、現在は別の業種でご活躍されております。