経営お役立ちコラム
2020.03.06 【知的財産】
自社の新商品のネーミング、
『商標登録』した方がいいですか?
- 中小企業向けアプリ「ポケ弁」にて配信した執筆時点のものであり、記事内容およびリンクについてはその後の法改正などは反映しておりません。
- 執筆者個人の責任で発表するものであり、東京弁護士会としての見解を示すものではありません。
- 個別事例に関する法的なアドバイスを行うものではありません。具体的なご相談は、東京弁護士会中小企業法律センターにお問い合わせください。
新商品や新サービスに、自分たちで苦労して考え出したマークやネーミングを付けたにもかかわらず、商標についての基本的な知識がないと思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。一度トラブルに巻き込まれると会社に大きな打撃を与えかねません。
事前に商標の基本とメリットを知って、トラブルを未然に防ぎ、安心して商品やサービスを提供していきましょう。
商標登録しないとどうなりますか?
【ケース1】
他社商品の商標などを調査することなく、自社商品にマークを付けて販売を始めました。しばらくして、突然A社から警告書が届きました。警告書の内容は,当該マークはA社の登録商標を侵害するため自社の当該マークの使用を禁止し、さらに自社に対して損害賠償を請求するというものでした。
【ケース2】
新たなサービスに自分たちで考え出したネーミングを付けて提供していたところ、思った以上に反響がよく売上げが伸びていきました。ところが、最近になって売上げが下がってきました。ネットなどで調査したところ、私たちのネーミングととても似たようなネーミングを付けて似たようなサービスを提供している企業を見つけました。
ケース1もケース2も、商標の基本的な知識を知って適切に対応していれば防げた可能性のあるトラブルです。では、商標とはどのような制度なのでしょうか。
商標の基本を知りましょう。
商標とは、事業者の取扱う商品やサービスを、他者が扱う商品やサービスと区別するために使用されるマーク(標章)をいいます。
事業者は、消費者に対して自社の商品やサービスを購入してもらえるよう営業努力や工夫によってブランド化します。消費者は商品やサービスについているマークを信頼して商品やサービスを選びます。他者の商品やサービスと区別するために用いられるマークすなわち商標は、事業者が提供する商品やサービスの信頼を表すものといえます。
商標は、文字や図形、記号、立体的形状、これらを組み合わせたものなどがあります。さらに、2015年4月からは、動きやホログラム、色彩、音、位置についても商標登録ができるようになりました。
商標権は、特許庁に対して、商品又はサービス(役務)を指定してマーク(標章)を申請し、登録されることで生じます。
商標のメリットとは?
商標を登録することにより、事業者は、指定した商品やサービスに当該商標を使用することができ(専用権、商標法25条)、第三者による使用を排除すること(禁止権、商標法37条1項)ができます。さらに、自社の登録商標と同一又は類似のマークを付けて販売している第三者に対して、侵害行為の差止や損害賠償等を請求することができるようになります。
【ケース1】は、販売前に、販売しようとしている商品やサービスについて、似たようなマークや名称を他社が商標登録していないか調査し、既に他者が商標登録している場合にはそのマークを使用しないことによりトラブルを防ぐことができました。
【ケース2】は、ネーミングを商標登録することで、他者が当該ネーミングと同一又は類似するものを使用することを禁止し、侵害行為の差止めや損害賠償等を求めることができるようになります。
このように、商標の基本的な知識を知って適切に対応することにより、ケース1やケース2のようなトラブルを防ぐことができます。