経営お役立ちコラム
2020.11.04 【契約】
中小事業者等への「しわ寄せ」問題等に関する
Q&A集
クライアントが製品や成果物を返品し、
報酬の支払いを拒否している場合の対応方法
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Q
A社(資本金2億円)は、総合アパレルメーカーであるB社(資本金100億円)から衣料品の製造を受託し、成果物を指定の納期に納品しました。B社は、A社の製品のうち、衣料品Ⅰについては、自社で全数受入検査を実施しましたが、衣料品Ⅱについては、受入検査を省略しました。その結果、不良品は発見されなかったため、A社の製品はすべて合格品として取り扱われました。
しかしながら、納品から1年が経過した後、B社は、不良品が発見されたことを理由として、衣料品Ⅰ及びⅡの一部を返品してきました。どのように対応すればよいでしょうか。 -
A
B社の行為は、下請法で禁止される返品に該当するため、A社としては、下請法違反を主張し任意の交渉を行うほか,B社が交渉に応じない場合には,公正取引委員会、中小企業庁に調査・指導を求め相談することが考えられます。
(解説)
- B社が受領した製品を返品することは、下請法4条1項4号等に違反する可能性があります。そのような場合、A社としては、どのように対応すべきでしょうか。
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前提として、下請法の適用の有無は、①取引当事者の資本金又は出資の総額の区別(3億円超、1千万円超3億円以下、5千万円超、1千万円超5千万円以下)、②取引の内容(製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託)の2つの側面から判断されます。
まず②について、本件取引は、衣料品の製造、すなわち、B社が業として販売を行う衣料品の製造をA社に委託することを内容とするため、「製造委託」に該当します(下請法2条1項)。
次に①について、A社の資本金が3億円以下、B社の資本金が3億円超ですので、それぞれ下請事業者、親事業者の要件を充たしています(下請法2条7項1号)。
したがって、本件取引には、下請法の適用があるため、B社が受領した製品を返品することは、製品に瑕疵があるなどA社の責めに帰すべき理由がある場合を除き、A社の同意があったとしても、下請法4条1項4号に違反することになります。 -
もっとも、本件において、B社は、衣料品Ⅰ及びⅡの一部が不良品であることを理由として返品を行っており、「A社の責めに帰すべき理由がある場合」として、下請法4条1項4号に違反しないのではないかが問題となります。この点に関し、検査方法と返品期間との関係について、衣料品Ⅰ及びⅡで場合分けをして考えていきます。
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(1) 衣料品Ⅰについて、B社は、自社で全数受入検査を実施しています。この場合に、B社は、直ちに発見できない瑕疵(不良品)について、その瑕疵(不良品)がA社の責めに帰すべき場合には、衣料品Ⅰの受領後6か月以内であれば、返品することができます。ただし、一般消費者に対して6か月を超えて品質保証期間を定めている場合には、その保証期間に応じて最長1年まで返品することができます。
本件では、衣料品Ⅰの納品から既に1年が経過していますので、仮にB社が一般消費者に対して6か月を超える品質保証期間を定めていたとしても、最長1年の返品期間を徒過しており、衣料品Ⅰを返品することは許されません。したがって、B社がA社に対して衣料品Ⅰを返品することは、下請法4条1項4号に違反することになります。 - (2) 衣料品Ⅱについて、B社は、受入検査を省略しています。この場合は、受入検査を放棄し、すべてを合格品とみなしたものとされますので、受領後に不良品が発見されたとしても、返品することはできません。したがって、B社がA社に対して衣料品Ⅱを返品することは、下請法4条1項4号に違反することになります。
- (3) よって、A社としては、B社の返品行為が下請法4条1項4号に違反することを指摘した上で、返品を拒否するなど任意の交渉を行うほか、B社が交渉に応じない場合には、調査・指導を求めて、公正取引委員会、中小企業庁や各経済産業局その他相談窓口へ相談することを検討することが考えられます。
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(1) 衣料品Ⅰについて、B社は、自社で全数受入検査を実施しています。この場合に、B社は、直ちに発見できない瑕疵(不良品)について、その瑕疵(不良品)がA社の責めに帰すべき場合には、衣料品Ⅰの受領後6か月以内であれば、返品することができます。ただし、一般消費者に対して6か月を超えて品質保証期間を定めている場合には、その保証期間に応じて最長1年まで返品することができます。
- また、本件とは異なり、下請法の適用がない場合であっても、B社の返品行為は、優越的地位の濫用(独占禁止法2条9項5号ハ)を理由とする独占禁止法違反が認められる可能性もありますので、参考にしてみてください。
- 以上のとおり、返品への対応方法は種々考えられますが、予防策として、契約書や3条書面(下請法3条に基づき、委託内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項が記載された書面)において、返品は許されないこと又は返品する場合の条件や期間などを明記しておくと良いでしょう。
https://www.toben.or.jp/form/chusho1.html
公正取引委員会・下請法に関する相談・申告等窓口
https://www.jftc.go.jp/shitauke/madoguti.html
中小企業庁・下請法申告受付窓口
https://mm-enquete-cnt.meti.go.jp/form/pub/jigyokankyo/shitaukeho_shinkoku
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