経営お役立ちコラム
2023.06.07 【SDGs】
「ビジネスと人権」への取り組み方法を教えてください。
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Q
ビジネスと人権に関する指導原則に取り組みたいのですが、具体的に何をすればよいでしょうか。 -
A
ビジネスと人権に関する指導原則(以下「指導原則」といいます)の考え方や実施プロセスを理解し、自社が関わる可能性のある人権問題にアンテナを張ることが必要です。
(解説)
指導原則のうち、「企業の人権尊重」に関する「運用上の原則」は以下のようなものであるとされています。- ① 方針によるコミットメント
- ② 人権デュー・デリジェンスの実施
- ⅰ 人権への影響評価
- ⅱ (顕在的・潜在的な負の影響に対する)予防/是正措置の実施
- ⅲ モニタリング(追跡調査)の実施
- ⅳ 外部への情報公開
- ③ 救済措置
本記事では、紙面の関係上、上記原則に基づき取り組む方法の着眼点を2点ご紹介します。
まず、1点目として、人権尊重≠法令遵守ということです。人権の概念は多義的であり、その内容は地域、国家、時代によって様々です。必ずしも日本の法律を守っていればよい、というわけではありません。
その上で、自社の業界やサプライチェーン上の位置づけによって、起こりうる人権問題や取るべき手段が異なりますので、人権への取組みは会社ごとに検討するべきです。このような視点に基づいて、幅広く発生可能性のある人権リスクを洗い出したうえで、「深刻度」と「発生可能性」の観点から人権リスクの重要度を評価し、優先順位をつけて対応することが必要です。このようなプロセスを可視化した人権リスクマッピングを作成する取組みはよく目にするところです。
2点目としては、自社のことのみならず、サプライチェーン上の取引先によるものなど、自社が関与する可能性のある人権侵害にも気を配る必要があります。具体的には、cause(人権への負の影響を引き起こしている)、contribute(人権への負の影響を助長している)、Linkage(人権への負の影響が、取引関係によって、企業の事業・製品・サービスと直接結びついている)といった場面に配慮する必要があると言われています。取引先による人権リスクの発生が懸念される場合には、その是正のために適切なアプローチを取ることが必要になります。以上のように、まずは上記の指導原則の考え方や実施プロセスを理解し、自社に関するステークホルダー、自社の属する業界やサプライチェーン上の位置づけを意識しながら、自社が関わる可能性のある人権問題にアンテナを張り、人権感覚を涵養していくことが求められると言えるでしょう。
欧米では人権デュー・デリジェンスの法制化が始まっていますし、日本でも2022年9月に「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」が発表されるなど、企業の人権尊重が求められるようになっています。
以上の記事に関するご不明点、SDGsやビジネスと人権に関するご相談があれば、中小企業・個人事業主の法的支援を扱う「東京弁護士会中小企業法律支援センター」の相談窓口まで、お気軽にお問い合わせください。
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