経営お役立ちコラム
2024.07.11 【労務】
社員の育児休業を止められるのか?
- Q,
先日、当社の優秀な男性社員から、配偶者が妊娠した旨の連絡がありました。
従業員から妊娠の連絡を受けた場合、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下「育介法」といいます。)に基づき、会社が行うべき対応を教えてください。特に、出生時育児休業(産後パパ育休)という制度も教えて欲しいです。【質問①】
また、出産予定日が繁忙期であるため、出生時育児休業及び育児休業(以下「育児休業等」といいます。)の取得時期を変更してもらうことは可能でしょうか。【質問②】 -
A,
【質問①】について
出生時育児休業とは、最も休業取得を必要とする子の出生直後に限定した休業制度であり、育児休業とは別に取得できます(解説1参照)。
労働者から妊娠又は出産の報告を受けた会社は、育児休業等に関して、解説2記載の措置を講ずる必要があります。また、妊娠又は出産の報告がなかったとしても、解説3で記載された措置を講ずる必要があります。【質問②】について
育児休業等には、有給休暇のような時季変更権が存在しないので、育児休業等の申入れを受けた場合、会社は当該申入れを拒否できません。
また、出産時期の調整を要求する言動や育児休業等の取得を制限する言動は、ハラスメント問題となります。
男性の育児休業は、これまで取得者が少なかった現状がありますが、近時の育介法改正により、常時雇用する労働者が1,000人を超える事業主に対して、男性労働者の育児休業の取得状況を公表するよう義務付ける等、取得を促進する取り組みが行われています。
優秀な人材の長期離脱を回避したいという気持ちは理解しますが、育児休業等に関する環境整備は、SDGsにも資するものであり、優秀な人材の獲得、離職率の低下にもつながると考えられ、積極的な対応が望ましいと考えられています。解説
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1 育児休業と出生時育児休業の比較
出生時育児休業 育児休業 対象期間
取得可能日数子の出生後8週間以内
4週間まで取得可能原則子が1歳まで
(最長2歳)分割取得 分割して2回取得可能
(初回取得の際の申出が必要)分割して2回取得可能
(取得の際に申出)休業中の就業 労使協定を締結している場合に限り、
労働者が合意した範囲で就業可能原則不可 - ※ 詳細については下記URL
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000909605.pdf - ※ 育児休業中の就労については下記URLのとおり限定的に認められていますが、育介法上の趣旨を考えると、会社側から安易に就労を求めないことをお勧めします
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000706037.pdf
- ※ 詳細については下記URL
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2 妊娠又は出産の報告があった場合の会社の対応
会社は、休業取得の意向確認及び以下の事項全ての周知を面談や書面交付(労働者が希望した場合、FAX・電子メール等も可。)により個別に行う必要があります。- ①育児休業等に関する制度
- ②育児休業等の申出先
- ③育児休業給付に関する制度
- ④育休期間の社会保険料の取扱い
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3 育児休業等に関する環境整備
- ①研修の実施
- ②相談体制の整備
- ③自社育児休業等の取得事例の収集・提供
- ④育児休業等取得促進に関する方針の周知
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