経営お役立ちコラム
2025.03.13 【SDGs】
中小企業と従業員の人権
-自主的取組事項と具体的取組事例-
1 はじめに
本記事では、企業が従業員の人権に関して行うべき自主的取組事項の一例について、具体的な取組事例と共にご紹介します。
2 自主的取組事項と具体的取組事例
- (1) ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)
近年耳にする機会が増えたダイバーシティとは、「多様性」「相違点」を意味し、企業においては、性別や年齢、国籍等、様々な属性を有した人が共存している状態をいいます。
一方、インクルージョンとは「受容」「一体感」を意味し、従業員同士がお互いを認め合いながら組織の一体化を目指していくあり方を指します。D&Iを推進する取組事項としては、残業時間の短縮化や年休の取得推奨など働き方の選択肢を増やすことなどがあります。
例えば、製造業を営むある企業は、女性の研究者やエンジニアが働きやすく、キャリアを長期的に構築することが可能な環境の整備を進めています。具体的には、残業を年平均20時間以下とすることや、年休を20日以上取得することを目標としたり、時間単位年休の導入やコアタイムの廃止等、働き方の選択肢を増やす取り組みを行っています。
こうした取り組みのように、様々な属性を持つ従業員の多様性を尊重しながら、それぞれの属性を生かすことで、多種多様な顧客のニーズに合わせた価値を提供できる人材の獲得や、継続的なイノベーションを生み出せる組織風土を醸成することに繋がります。そのため、企業側としても、多様性をもった経営を推進できるという恩恵を受けることができます。 - (2) ディーセントワーク
ディーセントワークとは、「働きがいのある人間らしい雇用」のことを指し、権利が保障され、十分な収入を生み出し、適切な社会的保護が与えられる生産的な仕事を意味します。具体的には、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)やメンタルヘルスに関する取組事項がこれに含まれます。
ワークライフバランス推進のために、ある企業では、公休・有給休暇とは別に、新たな生活価値を拡充するための休暇制度の導入や、副業、時短勤務等の多様な働き方を提供しています。このような取り組みは、企業側に対しても離職率の低下による採用コストの低下、従業員の満足度向上というメリットがあります。 - (3) 障がい者雇用の推進
障害者雇用推進法における法定雇用率の引き上げ検討にみられるように、今後はより多くの企業で積極的な障がい者雇用に向けた取り組みが求められます。
そのため、ある企業は、障がい者の雇用推進に向けたマスタープランの策定や管理サポート体制を強化することで、障がい者の不安や緊張を解消しつつ、オフィスの拡張等の具体的な配慮を行っています。
3 終わりに
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