経営お役立ちコラム
2025.05.22 【SDGs】
中小企業とサプライヤー
-SDGsにおける目標や法令遵守事項について-
1 はじめに
サプライチェーンに関する人権問題は、強制労働や児童労働など、海外の発展途上国に関連することが多く、中小企業には関係ないと思われる方も多いと思います。しかし、国内でも技能実習生制度の悪用などが生じており、中小企業にとっても無視できない問題です。
企業がコスト削減のために人件費を抑えることは重要な経営戦略ですが、これを重視するあまり、個人の人権を侵害することは、絶対に許されるものではありません。企業にとっても、人権侵害に加担する企業というレッテルが貼られてしまい、取引先として選ばれなくなるおそれがあります。
そこで、サプライヤーが尊重するべき人権や法令遵守事項についてご紹介します。
2 SDGsの目標及び尊重される人権
サプライチェーンに関する人権は、国際条約や憲法、労働関係法などによって保障されており、SDGsでも、サプライチェーン上の人権侵害を防止するための目標を定めています。
具体的には、強制労働や児童労働の問題では、労働者の自由意思に反した労働への従事や、子どもの虐待や搾取という深刻な人権侵害があるため、SDGsにおける「働きがいも 経済成長も」(目標8)や「平和と公正をすべての人に」(目標16)という目標を基に、強制労働の根絶や、児童労働の禁止・撲滅を目指しています。
紛争鉱物の使用は、強制労働による人権侵害のみならず、環境破壊を引き起こす戦争を助長する問題があり、SDGsでは「つくる責任 つかう責任」(目標12)や、「平和と公正をすべての人に」(目標16)を基に、平和的・公正な天然資源の管理・利用を目指しています。
また、技能実習生の悪用問題では、低賃金労働やハラスメント等のトラブルが後を絶ちません。そのため、SDGsの「質の高い教育をみんなに」(目標4)、「働きがいも 経済成長も」(目標8)、「人や国の不平等をなくそう」(目標10)といった目標を基に、適切な技能実習生制度の活用を目指しています。なお、令和6年6月21日に公布された改正出入国管理法により技能実習制度は廃止され、新たに育成就労制度が創設されています(施行日は死執筆時点で未定)。
3 サプライヤーに関する法令遵守事項
近年は、サプライチェーン上の人権保護を図るために、国内外で法令の制定やガイドラインの公表が行われています。
例えば、国連は2011年に「ビジネスと人権に関する指導原則」を策定し、これを踏まえ、日本政府は2020年に「ビジネスと人権に関する国内行動計画」を策定し、2022年に「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を公表しました。また、サプライチェーン上の人権侵害の法的規制として、英国は2015年に英国現代奴隷法を、米国では2022年にウイグル強制労働防止法を制定していたりします。
このようなサプライチェーン上の規制に関する動向を踏まえると、企業内はもちろん、取引先においても人権侵害がなされていないか確認しておくことが重要です。
4 終わりに
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