経営お役立ちコラム
2025.05.22 【SDGs】
中小企業とサプライヤー
-自主的取組事項と具体的取組事例-
1 はじめに
サプライチェーン上における直接の取引先に関する人権問題以外の問題は、強制労働、児童労働、紛争鉱物の採掘や取引、技能実習生制度の悪用など多岐にわたります。
そして、自社が上記のような人権問題に直接関与していない場合でも、サプライチェーン上のサプライヤー(二次サプライヤー・三次サプライヤー)が人権侵害に関与していた場合、サプライチェーンの一端を担う自社についても、人権侵害に関与している会社であると疑われてしまうおそれがあります。
以下では、サプライチェーン上の会社(サプライヤー)が人権侵害に関与していないかを確認するための自主的取組事項及び具体的取組事例をご紹介いたします。
2 自主的取組事項について
現在、日本においては、契約上の根拠がない限りは、サプライヤーにおいて人権侵害が行われていないかを判断するための情報提供を求めたり、サプライヤーの社内調査を実施したり、人権侵害の懸念が払拭できない場合にサプライヤーとの間の既存の契約を解除したりすることは難しいです。
そこで、自主的取組事項として、サプライヤーと契約する際に、予め情報提供を求めたり、調査を実施したり、場合によっては契約を解除したりすることの根拠となる規定(サステナビリティ条項)を盛り込むことが非常に重要となります。
サステナビリティ条項の中身として、具体的に何を盛り込むかについては、当該サプライヤーとの関係や両者の規模、取引の性質なども考慮して慎重に検討する必要がありますが、一つの参考資料として、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が公表している「持続可能性に配慮した調達コード(第3版)」の中に示されている「サステナビリティ条項のモデル条項」があります。当該モデル条項は、主に一定の水準以上の規模の企業における契約が念頭に置かれているものと考えられますが、中小企業の場合においても参考になる点があるかと思います。
3 具体的取組事例について
例えば、日本の大手スポーツブランド企業においては、独自のCSR調達規程を策定し、サプライヤーの工場を対象として定期的なCSR監査を実施し、改善指導を行い、場合によっては取引を見直すなどの対応が行われています。
上記は大企業の例ですが、大企業がサプライチェーン上の人権課題の把握について努めている実情を把握することは、中小企業が成長・発展していくにあたり必要不可欠といえます。
4 終わりに
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