経営お役立ちコラム

2025.10.30 【SDGs】

中小企業と環境・地域社会
~自主的取組事項と具体的取組事例

弁護士 枝廣 恭子

1 はじめに

近年、日本でも、気候変動により、大雨による洪水等の被害が頻繁に起きるようになり、生命、健康、住居、食料、教育等といった基本的な人権が脅威にさらされています。いまや、気候変動は、単なる「環境」の問題ではなく、人権の観点から全ての企業が取り組む必要がある問題であり、環境・地域社会との関係での自主的取組事項は、法令遵守事項と同様に重要な課題です。
そして、大企業は、持続可能な社会を実現するために人権を尊重し、環境に配慮した目標を掲げてさまざまな取組みを行っていますが、取引先の中小企業に対しても、特に温室効果ガスの削減については、サプライチェーン全体を通じた取組みを求めています。そのため、中小企業にとっても他人事ではありません。
一方で、中小企業も環境分野へ積極的に取り組み、社会課題に正面から取り組むことで、選ばれる企業となって大きなビジネスチャンスにつながりますし、取組みの過程で様々な体制が整うことによってガバナンスも強化され、持続可能な企業になれることは大きなメリットとなります。
以下では、中小企業の環境・地域社会との関係での自主的取組事項及び具体的取組事例をご紹介いたします。

2 自主的取組事項について

中小企業が環境・地域社会との関係で自主的に取り組むべき事項としては、社用車に環境配慮型車両を導入したり、省エネ対策を行ったりしてCO2等の温室効果ガスの削減を図ること、天然由来の成分や素材、リサイクル可能な素材を使うなど環境に配慮した製品設計等を行うこと、環境に配慮した製品を購入することなどが考えられ、身近なところから取り組めることも多くあります。地域のボランティア活動に積極的に参加すること等、経営資源の少ない中小企業であっても実施できるものもたくさんあります。
これらの取組みは、一過性のことではなく持続的に行うことが求められますので、従業員一人ひとりが自主性をもって積極的に取り組めるように進めていく必要があります。そのためには、SDGsのどの目標に貢献しているのかを意識し、従業員との対話を繰り返しながら「やりたい」ことを実行していくことも重要です。

3 具体的取組事例について

ある印刷会社では、排出される年間の温室効果ガス(CO2)を算定し、その全量をカーボン・オフセット(打消し活動)し、地球温暖化対策に貢献しています。これにより、大企業などの大きな関心事であるサプライチェーン排出量削減の要請にも応えられることを示しています。また、繊維製品を染色加工する会社では、重油ボイラーから100%天然ガスボイラーへ転換することでCO2排出量を約4割削減する等、環境に関する積極的な取組みを行っていますが、特徴的な事例として、これまで廃棄していた大量の綿ぼこりを集めてキャンプ用の着火剤として商品化して販売し、廃棄物の削減と売上増加につなげたことがあげられます。

4 終わりに

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