経営お役立ちコラム

2025.12.19 【SDGs】

中小企業におけるガバナンス
-SDGsの目標と尊重される人権及び法令遵守事項-

弁護士 松木 裕

1 ガバナンスにおけるSDGsの目標と尊重される人権

ガバナンスとは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みのことをいい、その目的は、「経済効率性、持続可能な成長と金融の安定的な運用をサポートしていくためのシステムであり、それによって外部からの投資を安定的に受けることや、経営活動の全般を支援しつつ、株主を含む様々なステークホルダーが公正にかつ共に成長していく社会を支えていくこと」と言われています。
このように、ガバナンスは、企業活動に関わるステークホルダーを公正に保護することを目的としており、SDGs等の人権尊重に資する取組みと言えます。SDGsとの関連では、目標16「平和と公正をすべての人に」のターゲット16.5「あらゆる形態の汚職や贈賄を大幅に減少させる。」、また16.7「あらゆるレベルにおいて、対応的、包摂的、参加型及び代表的な意思決定を確保する」と関連します。

2 ガバナンスにおける法令遵守事項

  1. (1)意思決定機構の実質的な機能化及び権限濫用の防止
    企業には、株主、取締役、監査役などの機関が存在しています。例えば、株主は株主総会で企業の根幹にかかわる重要事項を決定しますし、取締役は取締役会などを通じて他の取締役の業務執行を監視します。
    ところが、中小企業の一部において、株主総会や取締役会が開催されないなど、本来果たすべき役割が果たされないケースが存在しています。
    それぞれの役割を果たしていないと、一部の権限者において権限を濫用して、会社のみならずステークホルダーに損害を与える可能性がありますので、まずは法律に従って、それぞれの機関を機能させることが重要です。
  2. (2)文書化・記録化する
    株主総会や取締役会を含む会議の議事録を作成していないケースがあります。このような議事録は、意思決定の透明性を確保して、後日の紛争を防止する重要な役割があります。
    また、労働条件通知書の発行や就業規則の作成は、従業員の人権侵害を防止する意味で重要ですし、さらにセクハラ・パワハラ防止方針、SNS利用規程等の策定及び周知によって従業員によるステークホルダーに対する人権侵害を防止するために必要です。
  3. (3)従業員による違法行為の防止
    SNS、キックバックや飲酒運転など、従業員の行為によって、会社の信頼が著しく損なわれた例は散見されます。これを防止するために、組織体制の整備はもちろん、従業員研修・教育等のソフト面の充実によって従業員の自主性を高めて、意識を醸成させることは重要です。

3 終わりに

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