経営お役立ちコラム
2025.12.19 【SDGs】
中小企業におけるガバナンス
-自主的取組事項の概要と具体的な取組事例-
1 はじめに
ガバナンス体制の構築、整備の重要性が高まる中、中小企業では大企業に比べて経営資源が乏しいことが多いのも事実です。本記事では自主的取組事項の一例について、具体的な取組事例と共にご紹介しますので、自社のガバナンス体制の構築、整備の一助にしてください。
2 素朴な疑問や異論を言いやすい企業風土
企業風土の醸成はガバナンス構築の基盤です。いわゆる企業不祥事の原因として、企業理念の不浸透に加えて、経営者等にモノを言えない企業風土などが挙げられます。例えば、ある自動車メーカーにおける不祥事において、第三者委員会は、自動車開発に関する理念が共有されていなかったことを不祥事発生の最大の原因であると指摘しつつ、担当部署においてできないことを「できない」と言うことが容易ではなかった企業風土も原因の一つに挙げています。
中小企業は、大企業に比べて、迅速な意思決定、社内コミュニケーションの容易さ、経営の柔軟性等の面で、その強みを活かしやすく、素朴な疑問や異論を言いやすい企業風土を醸成しやすいといえます。実際に、ある中小企業では、会議等で企業としての理念等を社員に浸透させ、社員に行動するための判断軸を提供しています。また、規程類の整備の一環として人事評価基準を見直し、中期計画策定にあたって社員を議論に参画させるなどして、風通しのよい企業風土を作り上げています。
3 ダイバーシティの推進
企業において女性を役員として登用すると、取締役会が有効に機能し、ガバナンス機能の向上につながり、ひいては企業価値が向上することが指摘されています。しかし、昨今、役員として女性を登用する会社が多くなってきてはいるものの、日本の中小企業では女性活躍推進がなかなか進んでいないのも現実です。日本商工会議所および東京商工会議所が2022年に行った調査では、71.6%の中小企業が「女性の活躍を推進しているが、課題がある」と回答し、女性役員の比率は、48.1%の中小企業が「0%」、13.9%の中小企業が「0%超~10%」と回答しています。
そのような中でも、近年、ある中小企業は、積極採用や細やかな時短勤務を導入し、10人程度だった従業員数も70人に増やし、その8割が女性となっています。
4 内部通報・苦情処理メカニズムの整備
内部通報窓口の設置は不正の早期発見・是正の有効策です。公益通報者保護法では従業員が300人を超える企業に整備義務がありますが、中小企業でも自主的に窓口を設ける例が増えています。もっとも、ある調査によれば、中小企業において自社の相談・通報窓口があると認識している従業員は全体の約2割に過ぎず、社外窓口の認知に至ってはさらに低くなっており、中小企業ほど制度の周知が遅れている傾向があります。
不祥事事例には、とりわけ内部通報窓口が存在しない又は設置した内部通報窓口が周知等されていないことにより、不正等が見逃されて大きな問題に発展してしまったものがあります。大きな問題に発展する前に、内部通報窓口を設置かつ充実させ、従業員の声をきちんと拾い上げるべきでしょう。
5 終わりに
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