経営お役立ちコラム
2020.04.08 【新型コロナウィルス関連】
新型コロナウイルス対策に関するQ&A
(労働関係その5:労働者派遣)
【2022.8.8現在】
労働関係等については、個別の事情によって結論が変わってきますし、事案によっては微妙な判断が求められたり、最終的には経営判断をせざるを得ない部分もあるので、お悩みの場合は弁護士にご相談することをお勧めします。
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5 労働者派遣
<労働者派遣契約の中途解除等について>
- Q1 派遣労働者を受け入れている事業主ですが、新型コロナウイルス感染症の影響により事業が立ちゆかないので、労働者派遣契約を契約期間期間途中で解除したいのですが、労働者派遣法上問題がありますか。
-
A: 労働者派遣法第29条の2により、派遣先は、自らの都合により労働者派遣契約を解除する場合には、新たな就業機会の確保や休業手当等の支払に要する費用の負担等の措置を講じなければなりません。
新型コロナウイルス感染症の影響により事業を縮小したこと等に伴う派遣契約の解除であっても、派遣先からの申出により契約の解除を行う場合には、原則として、この措置を講ずる義務があります。
また、労働者派遣契約の中途解除が派遣先の都合によらないものであっても、派遣先は、「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の6の(3)に基づき、関連会社での就業をあっせんするなどにより、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることが必要です。 - Q2 派遣労働者を受け入れている事業主ですが、改正新型インフルエンザ特別措置法に基づく緊急事態宣言下で、都道府県知事からの要請・指示等を受け、事業を休止したことを理由として、労働者派遣契約を中途解除せざるをえない場合、派遣先は、労働者派遣法第29条の2に基づく措置を講ずる必要はありますか。
-
A: 労働者派遣法第29条の2により、派遣先は、自らの都合により労働者派遣契約を解除する場合には、新たな就業の機会の確保や休業手当等の支払に要する費用の負担等の措置を講じなければなりません。
派遣先の都合によるかどうかについては、個別の事例ごとに判断されるものであり、改正新型インフルエンザ特別措置法に基づく緊急事態宣言下で、都道府県知事から施設の使用制限や停止等の要請・指示等を受けて派遣先において事業を休止したことに伴い、労働者派遣契約を中途解除する場合であっても、一律に労働者派遣法第29条の2に基づく措置を講ずる義務がなくなるものではありません。
なお、労働者派遣契約の中途解除が派遣先の都合によらないものであっても、派遣先は、「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の6の(3)に基づき、関連会社での就業をあっせんするなどにより、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることが必要です。 - Q3 派遣労働者を受け入れている事業主ですが、改正新型インフルエンザ特別措置法に基づく緊急事態宣言下で、都道府県知事からの要請・指示等を受け、事業を休止したことを理由として、労働者派遣契約の内容の変更等を行う場合に、派遣先は派遣会社から派遣料金や金銭補償を求められることになりますか。
- A: 労働者派遣契約の履行を一時的に停止する場合や労働時間や日数など労働者派遣契約の内容の一部を変更する場合、それに伴う派遣料金等の取扱いについては、民事上の契約関係の問題となりますので、労働者派遣契約上の規定に基づき、派遣会社と派遣先で協議し、対応することとなります。
- Q4 派遣元事業主ですが、改正新型インフルエンザ特別措置法に基づく緊急事態宣言下で、都道府県知事からの要請・指示等を受けて事業を休止した派遣先から、労働者派遣契約の中途解除を申し込まれていますが、派遣会社としてどのような対応を行うべきでしょうか。
-
A: 「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の2の(3)及び(4)により、派遣会社は、ある派遣先との間で労働者派遣契約が中途解除された場合であっても、労働者派遣の終了のみを理由として派遣労働者を解雇することは困難です。
派遣先とも協力しながら派遣労働者の新たな就業機会の確保を図り、それができない場合はまずは休業等を行い雇用の維持を図るとともに、休業手当の支払等の労働基準法等に基づく責任を果たすことが必要です。
また、労働者派遣法第30条に基づき、派遣先の同一の組織単位での派遣就業見込みが一定期間以上である派遣労働者については、派遣先への直接雇用の依頼、新たな派遣先の提供などの雇用安定措置の義務(注:派遣就業見込みが3年以上の場合は義務、1年以上3年未満の場合は努力義務)が生じます。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う経済上の理由により事業活動の縮小を余儀無くされた派遣会社が、派遣労働者の雇用の維持のために休業等を実施し、休業手当を支払う場合、雇用調整助成金が利用できる場合がありますので、これを活用すること等により、派遣労働者の雇用の維持を図ることが望まれます。 - Q5 派遣労働者を受け入れている事業主ですが、労働者派遣契約を中途解除した場合に、派遣会社が休業手当支払いを行い、雇用調整助成金の支給を受けるときも、派遣先は労働者派遣法第29条の2に基づき、派遣会社に対して休業手当等の費用負担を行わなければならないですか。
- A: 派遣会社が雇用調整助成金の支給を受けた場合でも、派遣先において労働者派遣法第29条の2に基づく措置を講ずる必要がなくなるものではありません。そのような場合の派遣先としての休業手当分の費用負担額については、派遣会社との派遣先との間の労働者派遣契約等に基づき、対応することになります。
- Q6 派遣元事業主ですが、労働者派遣契約の期間中に派遣先の事業所が休業した場合や派遣契約を解除された場合は、派遣労働者を休業させ、休業手当を支払う予定です。派遣先が労働者派遣法第29条の2に基づき休業手当分の費用負担をした場合も、雇用調整助成金は利用できますか。
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A: 労働者派遣契約の期間中に派遣先の事業所が休業したこと等に伴い、派遣会社が派遣労働者を休業させ、休業手当を支払った場合には、雇用調整助成金を利用することが可能です。
また、労働者派遣契約の中途解除を行い、労働者派遣法第29条の2に基づく義務として、派遣先から派遣会社に対して休業手当相当額の費用支払いを行った場合であっても、派遣会社は、雇用調整助成金を利用することが可能です。そのような場合の費用負担については、派遣会社との派遣先との間の労働者派遣契約等に基づき、対応することになります。
<派遣労働者のテレワークについて>
- Q7 派遣労働者を受け入れている事業主ですが、改正新型インフルエンザ特別措置法に基づく緊急事態宣言が出されたこと等を踏まえ、派遣労働者についてもテレワークの実施を行うに当たり、労働者派遣法に関して留意すべきことはありますか。
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A: 派遣労働者に関しテレワークを実施するためには、就業の場所などについて、労働者派遣契約の一部変更を行うことが必要になる場合があります。
この場合の契約の変更については、緊急の必要がある場合についてまで、事前に書面による契約の締結を行うことを要するものではありません。ただし、派遣会社と派遣先の間で合意が必要となります。
(契約変更の例)
令和○年○月○日付け労働者派遣契約と同内容で、○○株式会社は、□□株式会社に対し、労働者派遣を行うものとする。ただし、就業の場所は、□□株式会社の△△事業所(テレワークを実施する場合には派遣労働者の自宅)とする。 - Q8 派遣会社及び派遣先は、派遣労働者の就業の場所を定期的に巡回することとされていますが、派遣労働者が自宅等でテレワークを実施する場合にも、自宅等を巡回する必要がありますか。
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A: 「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」及び「派遣先が講ずべき措置に関する指針」においては、派遣会社及び派遣先は、定期的に派遣労働者の就業場所を巡回することとしていますが、これは、派遣労働者の就業の状況が労働者派遣契約に反していないことを確認するためのものです。
派遣労働者に対して自宅等でテレワークを実施させるときは、例えば、電話やメール等により、就業状況を確認することができる場合には、派遣労働者の自宅等まで巡回する必要はありません。 - Q9 派遣労働者について自宅でのテレワークを実施するに当たって、派遣先として、派遣労働者の自宅の住所を把握しておきたいのですが、派遣会社から教えてもらうことはできますか。
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A: テレワークの実施に当たって必要な場合には、派遣先が派遣労働者の自宅の住所を把握することは差し支えありません。
ただし、派遣先からの求めに応じ、派遣会社から派遣先に対し、派遣労働者の自宅の住所に関する情報を提供する場合には、派遣会社として、派遣労働者本人に使用目的(テレワークの実施に当たって派遣先が住所を把握することが必要であり、派遣先に提供すること)を示して同意を得ることが必要です。
また、派遣先として、直接派遣労働者本人から自宅の住所に関する情報を取得する場合には、あらかじめ派遣会社に連絡の上、使用目的を本人に示した上で、本人の同意を得ることが必要です。
いずれの方法においても、派遣会社及び派遣先の双方が、労働者派遣法や「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」、個人情報保護法の規定を遵守し、派遣労働者の個人情報を適切に取り扱うことが求められます。 - Q10 正社員についてはテレワークを実施していますが、派遣労働者についてはテレワークを実施できないので、全員出社とする場合、労働者派遣法上問題がありますか。
- A: 製造業務や販売業務など、業務内容によってはテレワークの実施が難しい場合も考えられますが、派遣労働者であることのみを理由として、一律にテレワークを利用させないことは、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を目指して改正された労働者派遣法の趣旨・規定に反する場合があります。
- Q11 テレワークを新たに実施したいのですが、派遣労働者について、業務内容やテレワークを行うための機器の不足により実施が難しいのですが、どのような対応が考えられますか。
- A: 業務内容や機器の不足等のやむを得ない理由によりテレワークを行うことができない場合には、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、事業主が休業等を行い、休業手当を支払う場合について、雇用調整助成金が利用できる場合があります。
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