経営お役立ちコラム

2020.07.31 【新型コロナウィルス関連】

新型コロナウイルス対策に関するQ&A
(労働関係その6:その他)

【2022.8.8現在】

労働関係等については、個別の事情によって結論が変わってきますし、事案によっては微妙な判断が求められたり、最終的には経営判断をせざるを得ない部分もあるので、お悩みの場合は弁護士にご相談することをお勧めします。
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6 その他

<新卒の内定者について>
Q1 今春から就職が決まっている新卒内定者の内定を取り消したり、入社してすぐに休ませてもいいでしょうか。
A: 新卒の採用内定者について労働契約が成立したと認められる場合には、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない採用内定の取消は無効となります。事業主は、このことについて十分に留意し採用内定の取り消しを防止するため、最大限の経営努力を行う等あらゆる手段を講ずるようにする対応する必要があります。
また、新入社員を自宅待機等休業させる場合には、当該休業が使用者の責めに帰すべき事由によるものであれば、使用者は、労働基準法第26条により、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。
<在宅勤務を行う場合の手続き及び注意点>
Q2 在宅勤務を行う場合、何らかの法的な手続きは必要でしょうか。また、注意すべき点はありますか。
A:
<直接雇用労働者について>
既に在宅勤務制度が社内に存在する場合には、従業員に対し、在宅勤務を命ずる業務命令を発し、勤怠管理方法や業務内容の説明等在宅勤務に際して必要になる説明を行うことで在宅勤務を行うことが可能です。
ただし、就業規則上、勤務場所について「その他会社が指定する場所」等の条項が存在しない場合には、就業規則を変更し、従業員自宅等を勤務場所に含める手続きが必要になります。もっとも、就業規則が存在しないなどの場合には、労働者と個別の合意を行うという方法での対応も可能です。
なお、労働安全衛生法に基づき、使用者に対して、労働時間の客観的な把握義務が課されています(同法第66条の8の3)。在宅勤務の実施に際しては、PC等の使用時間の記録などの方法によって労働時間を管理するなど、工夫が求められますので、注意が必要です。
また、在宅勤務について、勤務時間、勤務場所、費用負担等、既存の雇用契約や就業規則でカバーし切れない場合には、雇用契約の合意による変更や就業規則の変更等の手続が必要となる場合があります。

<派遣社員について>
一方、派遣社員については、派遣先と派遣元との間で締結する労働者派遣契約において、就業場所が特定されています(労働者派遣法26条1項1号)。当該派遣契約に自宅を含む事業所以外の在宅勤務環境が指定されていない場合には、派遣先企業が派遣社員に在宅勤務を命じることはできません。この場合、別途、派遣元企業と協議を行い、派遣元との間で在宅勤務に関する合意を取得する必要があります。また、派遣元と派遣社員の関係では、雇用契約書や労働条件通知書上の勤務場所に変更がある場合がありますので、当該変更については、両者で合意しておく必要があります。
<出社拒否者への出勤命令>
Q3 新型コロナウイルスの感染が拡大し、労働者が感染を恐れ出勤を拒否しています。しかし、当該労働者の業務は在宅では不可能であることから、出勤命令を出したいのですが、可能でしょうか。
A:可能です。
ただし、使用者は、労働者に対し、安全配慮義務を負っていますので、労働者が安全に労務を提供することができる環境を整えていることが前提となります。
今般の新型コロナウイルスでは、使用者の合理的な配慮義務を尽くし、新型コロナウイルスへの感染リスクを可能な限り排除していることを要します。
<管理職者・店舗スタッフ等への出勤命令>
Q4 新型コロナウイルス感染予防のために、多くの社員に在宅勤務を推奨しているのですが、業務の性質上、管理職者や店舗スタッフは、出勤を要するという扱いですが問題ありますか。
A:会社として各労働者の性質・業務に応じ、個別具体的に在宅勤務の必要性・許容性を判断し、異なる取扱をすること自体は許容されます。

<管理職者>
本件では、管理職としての職責(業務状況の把握や経営層との意思決定等)関係で出勤を要するということであれば、管理職者には出勤を要するという扱いが可能です。

<管理職者ではない労働者間の別異取扱の可否>
そして、業務の性質に基づき、各労働者について別異取扱を行うことも可能です。
例えば、店舗の接客スタッフは、出勤を要するが、本社事務スタッフは在宅勤務を許容するという扱いも可能です。
ただし、不特定者との接触、三密の防止という感染リスクを回避すること、手洗いを励行させ、マスクの着用や手の消毒等を指導推進する等の対応を行い、安全配慮義務の履行をともなうことが大切です。
<飲み会等の私的行為の禁止命令の可否>
Q5 会社が労働者の就業時間外の私的な会合、飲み会、旅行等を禁止や制限することはできるでしょうか。要請という程度に留める場合には可能でしょうか。
A: 労働者の私的行為について、禁止や制限することは、原則、認められません。
ただし、当該私的行為が、企業秩序維持や業務遂行に悪影響を生じさせる恐れがある場合には、禁止や制限が許容される余地があると考えます。
例えば、感染者の多い海外の特定国から帰国した社員について、一定期間出勤停止や在宅勤務を命じることは、他の労働者への安全配慮義務の履行のために許容されると考えます。
もっとも、労使間で協議の上、特定の私的行為の自粛を要請することは差し支えありません。
<検査実施・報告・開示について>
Q6 労働者を就業させる上で、①労働者に抗原検査、PCR検査を受けさせることはできますか、②検査結果報告を義務付けることはできますか、③検査結果を取引先に開示することはできますか。
A: プライバシー及び個人情報保護の観点から、①~③のいずれについても、各労働者の同意がない場合に行うことはできません。
なお、①については、検査の必要性が高く、就業規則等の明示の根拠に基づき、不当な動機・目的がなく全員もしくは検査の必要性に応じた合理的な基準に従い、検査方法の相当性があり、検査結果が陰性の場合の不利益取り扱いが禁止されていない場合には検査の義務づけが可能とする見解もあります。風邪症状が続く者、濃厚接触者には該当しないが陽性者と相当の間接触した者、入国に陰性証明書を要求する国へ出張する場合等がこれに該当すると思われます。
<検査結果の証明について>
Q7 労働者を就業させる上で、労働者が新型コロナウイルス感染症に感染しているかどうか確認することはできますか。
A: 現在、PCR検査は、医師が診療のために必要と判断した場合、又は、公衆衛生上の観点から自治体が必要と判断した場合に実施しています。そのため、医師や自治体にPCR検査が必要と判断されていない労働者について、事業者等からの依頼により、各種証明がされることはありません。
また、新型コロナウイルス感染症患者については、医療保健関係者による健康状態の確認を経て、入院・宿泊療養・自宅療養を終えるものであるため、療養終了後に勤務等を再開するに当たって、当該患者が職場等に、陰性証明を提出する必要はありません。

(参考)
  • 令和2年3月19日事務連絡「新型コロナウイルス感染症に対応した医療体制に関する補足資料の送付について(その7)」(厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部)「新型コロナウイルス感染症に対応した医療体制についてのQ&A」2.帰国者・接触者外来について(20)
    https://www.mhlw.go.jp/content/000621714.pdf
  • 令和2年4月24日事務連絡「新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養の対象並びに自治体における対応に向けた準備について」に関するQ&Aについて(その3)」(厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部【主に一般の方等向け】問15
    https://www.mhlw.go.jp/content/000625171.pdf
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