経営お役立ちコラム

2022.02.28 【労務】

同一労働・同一賃金に関する
Q&A集
通勤手当について、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で差異を設ける場合、どのような点に注意すればよいですか。

弁護士 髙橋 幸宏

Q
通勤手当について、正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、短時間労働者)との間で差異を設ける場合、どのような点に注意すればよいですか(派遣労働者については別記事をご参照ください)。
A
通勤手当の性質や支給目的に即し、職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情を考慮したうえで、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇の相違を禁止したパート有期法8条に違反しないように注意する必要があります。

(解説)

  1. パート有期法8条は、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇の相違を禁止する、いわゆる均衡待遇のルールを定めています。具体的には、両者の職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情のうち、通勤手当等個々の待遇の性質や支給目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理な相違を設けてはならないと定めています。
  2. 通勤手当とは、労働者の通勤にかかる費用を補填する趣旨で支給される手当です。
    通勤手当等の待遇差が不合理といえるか否かを判断する際には、厚生労働省が作成した同一労働同一賃金ガイドライン(厚生労働省告示第430号)が参考になります。
    通勤手当について、同一労働同一賃金ガイドラインでは、第一に、非正規雇用労働者にも正規雇用労働者と同一の通勤手当を支給しなければならないと指摘されています。これは、通勤手当が通勤に要する交通費を補填する目的の手当であるところ、通常は、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の職務内容等を考慮しても通勤に要する交通費の額が変わるわけではなく、相違を設ける合理的な理由がないからです。
    他方で、同一労働同一賃金ガイドラインでは、通勤手当の待遇差が問題とならない例として、所定労働日数が多い正規雇用労働者には月額の定期券の金額に相当する額を支給しているが、所定労働日数が少ない非正規雇用労働者には日額の交通費に相当する額を支給している例が挙げられています。この例では、通勤の日数が少ないという非正規雇用労働者の職務内容(またはその他の事情)を考慮すれば、月額の定期券の金額よりも低い日額の交通費を支給することも不合理とはいえないため、問題とならないと指摘されています(実質的に見ても、非正規雇用労働者は交通費全額が補填されるため、不利益はありません)。
  3. 正規雇用労働者と非正規雇用労働者の通勤手当の相違が不合理であるかが争われた裁判例は、パート有期法改正前の労働契約法20条に関するものであるもののいくつか存在しており、パート有期法8条の解釈・適用の際にも参考になると思われます。
    例えば、ハマキョウレックス事件の最高裁判決(最判平成30年6月1日、労働判例1179号)は、正規雇用労働者と、正規雇用労働者と同様の職務を行う非正規雇用労働者との間で、通勤手当の額に相違があることについて、
    • 通勤手当は、通勤に要する交通費を補填する趣旨で支給されるものであるところ、労働契約に期間の定めがあるか否かによって通勤に要する費用が異なるものではない。
    • 職務の内容及び配置の変更の範囲が異なることは、通勤に要する費用の多寡とは直接関連するものではない。
    • 通勤手当に差違を設けることが不合理であるとの評価を妨げるその他の事情もうかがわれない。
    という点を指摘し、通勤手当の額の相違は不合理な相違であると判断しました。もっとも、裁判例はあくまで事例判断であり、事実関係を異にする事案では異なる判断が出る可能性があることに注意が必要です。
  4. 同一労働同一賃金への対応が未了であり、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で通勤手当等の待遇に差異を設けている場合には、厚生労働省作成の取組手順書等を参考に、同一労働同一賃金に違反しないような賃金制度の構築・運用となっているか確認しなければなりません。同一労働同一賃金に違反しないような賃金制度の構築・運用にあたっては、こちらの記事も参考にしてください。

以上の記事に関するご不明点、同一労働同一賃金を含む働き方改革への対応その他労務問題に関するご相談は、中小企業・個人事業主の法的支援を扱う「東京弁護士会中小企業法律支援センター」の相談窓口まで、お気軽にお問い合わせください。