経営お役立ちコラム

2022.09.02 【労務】

同一労働・同一賃金に関する
Q&A集
派遣法(後編)について、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で差異を設ける場合、どのような点に注意すればよいですか。

弁護士 上田 孝明

Q
「労働者派遣における同一労働同一賃金では、どのような点に注意したら良いでしょうか。」(後編)
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  1. 情報提供義務
    派遣先は、労働者派遣契約を締結するに当たっては、あらかじめ、派遣元に対し、当該労働者派遣に係る派遣労働者が従事する業務ごとに、比較対象となる派遣先の労働者の賃金その他の待遇に関する情報等を提供する義務があります。(労働者派遣法第26条第7項)。
    派遣元は、この情報提供がないときは、労働者派遣契約を締結してはなりません(労働者派遣法第26条第9項)。派遣先は、この情報に変更があったときは、遅滞なく、派遣元に対し、変更の内容に関する情報を提供しなければなりません(派遣法第26条第10項)。
  2. 説明義務
    派遣元は、派遣労働者に対して以下の事項を説明する義務があります。
    1. (1)派遣労働者として雇用しようとするときの説明
      派遣元は、派遣労働者として雇用しようとする労働者に対し、当該労働者を派遣労働者として雇用した場合の①賃金の額の見込み、健康保険・厚生年金保険の被保険者の資格の取得、雇用保険の被保険者となることに関する事項その他の労働者の待遇に関する事項、②事業運営に関する事項、③労働者派遣に関する制度の概要、④教育訓練、派遣労働者の職業設計に関する相談の機会の確保その他の援助の内容を説明しなければなりません(労働者派遣法第31条の2第1項、労働者派遣法施行規則第25条の14)。②から④は書面によらずとも適切な方法で良いとされていますが、①については書面の交付等労働者に資料が残る形により行わなければなりません(同規則同条第1項)。
    2. (2)派遣労働者として雇い入れようとするときの明示及び説明

      1. ア 派遣元は、労働者を派遣労働者として雇い入れようとするときは、あらかじめ、当該労働者に対し、労働基準法第15条に基づく労働条件の明示に加えて、①昇給の有無、②退職手当の有無、③賞与の有無、④協定対象派遣労働者であるか否か(協定対象派遣労働者である場合には、当該協定の有効期間の終期)、⑤派遣労働者から申し出を受けた苦情の処理に関する事項を明示しなければなりません(労働者派遣法第31条の2第2項第1号、労働者派遣法施行規則第25条の14第2項)。文書の交付の他、労働者が希望した場合には、FAXや電子メールなどにより明示することもできます(労働者派遣法施行規則第25条の15)。
      2. イ また、派遣元は、派遣先均等・均衡方式、労使協定方式、職務の内容等を勘案した賃金の決定に関し講ずることとしている措置の内容に関する説明を、書面の活用その他適切な方法により行わなければなりません(労働者派遣法第25条の18)。
    3. (3)労働者派遣をしようとするときの明示及び説明
      派遣元は、労働者派遣(協定対象派遣労働者を除きます。)をしようとするときは、あらかじめ、当該派遣労働者に対し、労働者派遣法34条第1項に基づく就業条件の明示に加えて、文書の交付等により、①賃金の決定等に関する事項、②休暇に関する事項、③昇給の有無、④退職手当の有無、⑤賞与の有無、⑥協定対象派遣労働者(派遣元と労使協定を結び、労使協定によって賃金などの待遇が決定される派遣社員)であるか否か(協定対象労働者である場合には、当該協定の有効期間の終期)を明示するとともに(労働基準法第15条第1項前段・労働基準法施行規則第5条第1項、労働者派遣法施行規則第25条の20)、派遣先均等・均衡方式、労使協定方式、職務の内容等を勘案した賃金の決定に関し講ずることとしている措置の内容に関する説明を、書面の活用その他適切な方法により行わなければなりません(労働者派遣法労働者派遣法第31条の2第3項)。
    4. (4)派遣労働者から求めがあったときの待遇の相違の内容及び理由等の説明
      派遣元は、その雇用する派遣労働者から求めがあったときは、当該派遣労働者に対し、当該派遣労働者と比較対象となる派遣先の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに派遣先均等・均衡方式、労使協定方式、職務の内容等を勘案した賃金の決定、就業規則の作成の手続(労働者派遣法第30条の3~第30条の6)までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項を説明しなければなりません(労働者派遣法労働者派遣法第31条の2第4項)。派遣元は、派遣労働者がこの求めをしたことを理由として、当該派遣労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません(労働者派遣法第31条の2第5項)。
  3. 裁判外紛争解決手続の規定の整備
    派遣労働者からの苦情や派遣労働者と派遣元又は派遣労働者と派遣先の間の紛争(主張が一致せず、対立している状態をいいます。)のうち公正な待遇の確保に関するものについては、その解決方法が様々であり、本来当事者間で自主的に解決することが望ましいことに鑑み、当該紛争についてまず当事者間で自主的解決の努力を行うこととされ、派遣元及び派遣先は、自主的な解決を図るように努めるものとされています(労働者派遣法第47条の5)。
    また、派遣労働者の公正な待遇の確保に関する紛争を簡易で迅速に解決できるようにするため、知見等を有する都道府県労働局長が、紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告を行うことができるようにされています(労働者派遣法第47条の7)。さらに、都道府県労働局長による紛争解決の援助に加え、公正、中立な第三者機関による調停による解決を図る制度も設けられています(労働者派遣法第47条の8以下)。

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