経営お役立ちコラム

2023.02.22 【労務】

同一労働・同一賃金に関する
Q&A集
福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)の利用について、正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間で差異を設ける場合、どのような点に注意すればよいですか。

弁護士 藤原 慎一郎

Q
福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)の利用について、正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間で差異を設ける場合、どのような点に注意すればよいですか。
A
正規雇用労働者の利用する福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)について非正規雇用労働者にも利用の機会を与える義務を定めるパート有期法12条に違反しないように注意する必要があります。基本的には、正規雇用労働者と同一の事業所に働く非正規雇用労働者には、同一の福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)の利用を認めなければなりません。ただし、必要に応じて利用時間等に区別を設けることはありえます。詳細は、後記3をご参照ください。

(解説)

  1. パート有期法12条では、通常の労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設については、その雇用する非正規雇用労働者に対しても、利用の機会を与えなければならない、というルールを定めています。
  2. パート有期法12条の定める「福利厚生施設」とは、給食施設、休憩室、更衣室であることが定められています(パート有期法施行規則第5条)。
    厚生労働省が2018年12月28日に作成した同一労働同一賃金ガイドラインにおいては、通常の労働者と同一の事業所で働く非正規雇用労働者には、通常の労働者と同一の福利厚生施設(給食施設、休憩室及び更衣室)の利用を認めなければならないと定めています。
    なお、福利厚生施設には、これらの他にも社宅、運動施設、リクリエーション施設等もありますが、本記事では、給食施設、休憩室、更衣室についてのみ取り扱います。
  3. 正規雇用労働者と非正規雇用労働者の福利厚生施設の利用の相違が不合理であるかが争われた裁判例については、現時点で存在しません。
    パート有期法12条では、福利厚生施設については非正規雇用労働者にも「利用の機会」を与えることとされておりますので、業態態様等によって必要最小限度の範囲で、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の福利厚生施設の利用について利用時間等に区別を設ける余地はあると思われますが、どの程度の区別までが許されるかに関しては、現時点で、裁判所における具体的な判断基準や要素については定かではありません。
  4. 賃金・手当・その他の待遇に関する不合理な待遇格差の解消(同一労働同一賃金)への対応が未了であり、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で福利厚生施設の利用等の待遇に差異を設けている場合には、厚生労働省作成の取組手順書等を参考に、同一労働同一賃金や不合理な待遇格差の禁止(パート有期法第8条)に違反しないような賃金制度・その他の待遇制度の構築・運用となっているか確認しなければなりません。同一労働同一賃金に違反しないような各制度の構築・運用にあたっては、こちらの記事も参考にしてください。

以上の記事に関するご不明点、同一労働同一賃金を含む働き方改革への対応その他労務問題に関するご相談は、中小企業・個人事業主の法的支援を扱う「東京弁護士会中小企業法律支援センター」の相談窓口まで、お気軽にお問い合わせください。

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