経営お役立ちコラム

2023.03.08 【労務】

同一労働・同一賃金に関するQ&A集
正規雇用労働者と非正規雇用労働者の職務内容等が同一の場合における取扱いのルール(前編)
パート有期法8条との違い、パート有期法9条の意義

弁護士 井上 陽介

Q
パート有期法では、正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者)との待遇について均等待遇が求められていると聞きましたが、具体的にはどのような内容でしょうか【前編】。

【後編】はこちらをご参照ください。

A
均等待遇とは、一定の要件の下での正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の待遇の相違を禁止する制度を言います。パート有期法9条は均等待遇についての規定であり、職務の内容及び雇用の全期間における職務内容・配置の変更範囲が同一の場合に待遇の差別的取扱いを禁止しています。同条の適用があるかどうかの判断基準は施行通達(平成31年1月30日基発0130第1号「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行について」)において定められています【前編】。
事業主がパート有期法9条に違反した場合、同条に違反する待遇の相違を設ける労働契約は無効となり、事業主には不法行為として損害賠償が認められる可能性があります。また、同条に違反した事業主については、厚生労働大臣又はその権限の委任を受けた都道府県労働局長が報告を求め、又は助言、指導、勧告を行うことができるとされており、かかる勧告に従わなかった事業主については、その企業名を公表することができるとされています【後編】。

(解説)

  1. パート有期法8条との違い
    パート有期法9条は、短時間・有期雇用労働者と正規雇用労働者との間の均等待遇を定めています。これに対し、パート有期法8条は短時間・有期雇用労働者と正規雇用労働者との間の均衡待遇を規定しています(均衡待遇については、こちらの記事で解説しておりますので、ご参照下さい)。
    職務の内容及び雇用の全期間における職務内容・配置の変更範囲が同一の場合に待遇の差別的取扱いを禁止した規定がパート有期法9条であり、同一でない場合における待遇の不合理な相違を禁止した規定がパート有期法8条となります。
  2. パート有期法9条の意義
    上記1において述べました通り、パート有期法9条は、均等待遇を定めています。
    条文に規定のある通り、①「職務の内容が通常の労働者と同一」であり、かつ、②「雇用関係が終了するまでの全期間について、職務の内容及び配置が同一の範囲で変更されることが見込まれる場合」には、待遇について差別的取扱いをしてはならないとされています。これらの定義や判断基準等については、施行通達(平成31年1月30日基発0130第1号「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行について」)において具体的に定められていますので、参考にしてください。

以上の記事に関するご不明点、同一労働同一賃金を含む働き方改革への対応その他労務問題に関するご相談は、中小企業・個人事業主の法的支援を扱う「東京弁護士会中小企業法律支援センター」の相談窓口まで、お気軽にお問い合わせください。

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