経営お役立ちコラム

2023.02.22 【労務】

同一労働・同一賃金に関する
Q&A集
説明義務(中編)- 非正規雇用労働者からの求めに応じた説明義務

弁護士 間嶋 修平

Q
パート有期法では、正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者)との待遇の相違等について非正規雇用労働者への説明が義務化されていると聞きましたが、具体的にはどのような内容でしょうか【中編】。【前編】はこちら、【後編】はこちらをご参照ください。なお、派遣労働者については別記事をご参照ください。
【前編】はこちら、【後編】はこちらをご参照ください。なお、派遣労働者については別記事をご参照下さい。 A
事業主は、非正規雇用労働者に対して、①雇入れ時には、待遇の内容等を(パート有期法(以下略)14条1項)【前編】、②非正規雇用労働者から説明を求められたときは、待遇の相違の内容及び理由並びに待遇決定の際に考慮した事項(同条2項)を説明しなければなりません【中編】。また、事業主は、当該説明を求めたことを理由として、非正規雇用労働者に対して、解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません(同条3項)【後編】。

(解説)

  1. 2.求めに応じた説明義務(14条2項)
    事業主は、非正規雇用労働者に対して、雇い入れた後、非正規雇用労働者から説明を求められた場合、待遇の相違の内容及び理由並びに待遇決定の際に考慮した事項について説明しなければなりません。
    1. (1)待遇の相違の内容及び理由の説明
      1. ア 説明をする際に比較対象となる「通常の労働者」とは、指針(「事業主が講ずべき短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針」厚生労働省告示第326号)によれば、「職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲等が、短時間・有期雇用労働者の職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲等に最も近いと事業主が判断する通常の労働者」とされています。
        「職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲等に最も近い」通常の労働者の選定方法としては、Ⅰ)以下の①~⑤の順に「近い」と判断することを基本とした上で、Ⅱ)同じ区分に複数の労働者が該当する場合には、❶基本給の決定等において重要な要素(職能給であれば能力・経験、成果給であれば成果など)における実態、❷説明を求めた短時間・有期雇用労働者と同一の事業所に雇用されるかどうか等の観点から判断し、更に絞り込むことが考えられます。 また、比較対象となる通常の労働者の範囲としては、施行通達(「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行について」基発0130台1号等)によれば、以下が挙げられています。なお、個人情報保護の観点から、事業主は、説明を受けた短時間・有期雇用労働者において、比較対象となった通常の労働者が特定されないように配慮する必要がありますので、「一人の通常の労働者」(特定個人)を選択して説明することは避けた方がよいかもしれません。 そして、事業主は、施行通達によれば、比較対象として選定した通常の労働者及びその選定の理由についても、求めがあれば説明する必要があるとされています。そのため、事業主としては、上記で述べた選定方法をどのように適用し、どのような者を通常の労働者として選定したのかを整理しておくとよいでしょう。
      2. イ 待遇の相違の内容の説明については、指針によれば、以下の事項を説明することとされています。 「待遇の個別具体的な内容」は、施行通達によれば、比較対象となる通常の労働者の選び方に応じ、以下の事項を説明することとされています。 「待遇に関する基準」を説明する場合は、施行通達によれば、例えば、賃金であれば、賃金規程や等級表等の支給基準を説明することとされています。ただし、説明を求めた短時間・有期雇用労働者が、比較対象となる通常の労働者の待遇の水準を把握できる程度の説明が必要であるため、「賃金は、各人の能力、経験等を考慮して総合的に決定する」等の説明では十分ではないとされています。
      3. ウ 待遇の相違の理由の説明については、指針及び施行通達によれば、通常の労働者及び短時間・有期雇用労働者の職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、待遇の性質及び待遇を行う目的に照らして適切と認められるものに基づき説明する必要があり、具体的には、以下の内容を説明することとされています。
    2. (2)待遇決定の際に考慮した事項の説明
      待遇決定の際に考慮した事項の説明については、施行通達によれば、以下の内容を説明することとされています。
    3. (2)待遇決定の際に考慮した事項の説明
      説明方法は、施行通達によれば、14条1項と同様【前編】、短時間・有期雇用労働者がその内容を理解できるよう、資料を活用し、口頭により行うことが基本であるとされています。

以上の記事に関するご不明点、同一労働同一賃金を含む働き方改革への対応その他労務問題に関するご相談は、中小企業・個人事業主の法的支援を扱う「東京弁護士会中小企業法律支援センター」の相談窓口まで、お気軽にお問い合わせください。

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